前年5位から昨シーズン2位、そして今シーズンも2位につけている千葉ロッテマリーンズ。かつて筑波大学大学院でコーチングを学んだ経験もある吉井理人監督のチームマネジメントのひとつが「心理的安全性の担保」だ。野球未経験者の意見を積極的に採用する方針の背景にあるものとは何か――。

※本稿は、吉井理人『機嫌のいいチームをつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

吉井理人氏
千葉ロッテマリーンズ監督の吉井理人氏

2位に食い込む千葉ロッテマリーンズ・吉井理人監督の“会議術”

2024年シーズンの春季キャンプに入る前、1月10日にスタッフミーティングを行った。2023年シーズンに入る前に行ったミーティングをバージョンアップさせたものだ。

人数も30人から40人に増やし、2023年には参加していなかった栄養士、カウンセリングのドクターなど、野球の専門家ではないスタッフにも入ってもらった。男ばかりのプロ野球の世界において、女性の意見は貴重だ。そこで、数人の女性にも入ってもらった。その結果、初年度に比べてより多くの意見が出た。

2024年は、抽出された問題の解決策まで一気に考えてもらった。グループごとに課題を挙げ、その課題を解決するためにやれることまで発表してもらった。

ミーティングの時間は有意義で、みんなでチームを強くしているという一体感がより強くなった。具体的に使える解決策もあった。野球を専門とする監督やコーチの視点ではあまりにも当たり前で見過ごされたであろう意見や、そこまでしなくてもいいという考えから案の段階で切り捨ててしまいそうな意見まで挙がった。

たとえば、二軍の試合についての意見だ。基本的に、二軍はデーゲームで試合を行うのが普通だ。夏場でも変わらない。二軍のホームであるロッテ浦和球場は屋根がついていないため、夏場はかなり体力を消耗する。

夏場は一軍の故障者が増えて、その供給元として二軍の役割が増す時期だ。二軍にとってはいちばん大事な時期なのに、二軍の選手のほうが消耗している。それでは、後半に勝てなくなるのも当然だ。

スタッフからそうした指摘があったが、私たち野球経験者には、二軍は夏の暑いときでも昼間に練習や試合をするものだという固定観念があった。だから、そこまで考えたことがなかった。

「二軍も、一軍が遠征でいないときはナイターにすればいいんじゃないですか?」

プロ野球の既存のシステムを熟知していない人たちには、なぜ無理に暑い昼間に試合をしなければならないか不思議に映っていた。反対に、プロ野球を熟知している私たちにはそれが当たり前に映っていた。まったくもって盲点である。

確認すると、球場が空いていればナイターでも構わないという。これまでにない発想を取り入れたおかげで、チームにとってプラスの施策が動き出した。