打つのは素手、道具はゴムボールだけ

今年4月に都内でベースボール5のチーム「Spirit Bonds(スピリット ボンズ)」を立ち上げた宮之原たけるさん(31)が、その魅力を語る。

今年4月に誕生したベースボール5のチーム「Spirit Bonds(スピリット ボンズ)」を立ち上げた宮之原健さん(31、右)
筆者撮影
今年4月に誕生したベースボール5のチーム「Spirit Bonds(スピリット ボンズ)」を立ち上げた宮之原健さん(右)

「ベースボール5は、ボール一つで自分を表現することができます。やればやるほど、難しさを感じますけど、楽しいですし、このスポーツなら、いろんな方と笑顔になれる時間を作ることができます。

野球、ソフトボールとは差別化を図っていて、リーズナブルに始めることができるのも特徴で、ボール、半袖、短パン、シューズ、ベースを作るための養生テープがあれば十分です。半袖や短パンは持っている子どもたちも多いので、しいてかかるとすれば、水代くらいでしょうか(笑)」

ベースボール5は、基本的なルールは野球やソフトボールと同じだが、大きく異なるのは、専用のゴムボールさえあればできる点だ。投手はおらず、守備、攻撃ともに素手で行うため、高額なバットやグラブを用意する必要がなく、初期投資はグッと抑えられる。

男女混合の1チーム5人、5イニング制で試合時間も15~20分とスピーディー。野球の内野より一回り小さい18メートル四方のフィールドが確保できれば、屋内外を問わず、気軽にプレーできる。

元日大三高副主将として全国制覇を経験

「チームを作る上での初期投資は、1ダース8000円のボールを2ダース買って、1万6000円ほどかかりましたが、野球の硬式球と違って、切れたり傷がついたりすることはないので、使おうと思えば半年は大丈夫です。あとは年会費を一人1万円、月にして800円ちょっと頂いているので、その中から施設料を払ったり、今後はボールを買ったりします」

宮之原さんは、華やかな球歴を辿ってきた元野球選手だ。高校野球界の名門・日大三(西東京)で副主将を務め、2011年夏の甲子園は背番号16の控え外野手として全国制覇を経験した。

2011年、日大三高(西東京)副主将として夏の甲子園優勝を経験した
2011年、日大三高(西東京)副主将として夏の甲子園優勝を経験した。大学野球を経て独立リーグ入りしたが、入団当初は用具の工面にかなり苦労したと語る

その後、東京学芸大を経て、2016年に独立リーグの福島ホープスに入団。2018年に武蔵ヒートベアーズ(現埼玉武蔵ヒートベアーズ)に移り、4番、主将、選手会長の重責を担いながら、3年連続打率3割をマークしたこともある。2021年も主力としてチームの地区初優勝に貢献したのを花道に、現役を引退した。

「球団からはありがたいことに、残ってほしいとずっと言っていただきました。ただ、ずっとNPBの選手として、憧れだった松井秀喜さんのように東京ドームで本塁打を打ちたいという思いがあって、当時、28歳という年齢を考えた時に、色々悩んだ上で、ユニホームを脱ぐ決断をしました」