5回目のデートで出した結論

彼もA子さんも車を持っていないので、彼がレンタカーを手配してくれた。彼は、おそらく慎重な性格なのだろう。「僕は運転が苦手だから、運転中はあまり会話ができないかもしれない。そうなったらごめん」と何度も念を押す。しかし、そう言われるほど、A子さんは自分の気持ちがさらに盛り下がるのを感じたという。「運転が下手な人って、ほかのことも不器用な気がする……」。せっかく運転してくれると言ってくれている人のことを、そんなふうに悪い方へ、悪い方へと考える自分のことまでいやになってきてしまった。

明るい背景に若い女性の横顔
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実際には、彼の運転に危なさはなく、運転中に会話が少ないことも気にならなかった。けれど、彼と並んで砂浜に立ち、寄せる波を眺めながらA子さんは「この人のことを好きにはなれない。説明できないけど、生理的にムリなんだ」と確信を持ったという。

彼との交際を「お断りしたい」と告げると、結婚相談所の担当者は「こんないいお相手を断るなんて」とため息をついた。「では、どんな人ならいいんですか」と聞かれて、A子さんは答えられなかった。

たしかに、彼は結婚相手としては申し分ない。しかも、自分に好意を持ってくれている。あのままおつきあいを続けていれば、結婚できたかもしれない。それなのに、自分は「生理的にムリ」という曖昧な理由で彼を拒絶して、結婚のチャンスをみすみす手放した。

A子さんは自己嫌悪に陥り、「私には、そもそも結婚なんてムリなのかもしれない」と落ち込んでしまった。

「好きになれない」のは失礼なことじゃない

私がA子さんに初めて会ったのは、その彼にお断りをしてから数週間経った頃のこと。A子さんは、まだお断りした彼のことをひきずっていた。「条件も人柄もいい人なのに、好きになれないなんて、相手にも失礼ですよね」とうなだれるA子さんに、私は「失礼だなんてことはありませんよ」と告げた。「むしろ、断らずにずるずると交際を続けるほうが、ずっと失礼なことです」

いうまでもないことだが、結婚はそもそも生理的なものだ。少なくとも、結婚相手にスキンシップを求めていない男性に私は会ったことがない。結婚をしたら、基本的に365日、生活をともにすることになる。「生理的にムリ」な相手と結婚するのは、不可能なことなのだ。

一方で、「自分とは合わない人でも、ほかの女性とは合う可能性が大いにある」ということを忘れてはいけない。A子さんにとっては「ムリ」な相手が、ほかの誰かにとっては「理想の結婚相手」になり得る。それが相性というものだ。

だから、相手に失礼なのは断ることではない。むしろ、好きになれないのにきちんと断らず、彼が別の女性と出会うチャンスを奪ってしまうことだ。万が一、「条件がいいから」と「生理的にムリ」な相手と結婚してしまったら、自分だけではなくて相手のことも不幸にしてしまう。婚活をする際は、つねにそのことを忘れてはいけない。

もちろん、相手に直接「生理的にムリだから」などと告げる必要はない。ムリなのは自分の問題で、相手に非はない。大事なのは、相手が次の出会いに進めるようにきっぱりとお断りすること。相手から断られたときも、「次の出会いに進めてよかった!」と前向きに受けとめればいい。