日本経済新聞の社説でも指摘された燃費の差異
日本の現在の燃費基準は、国交省と経済産業省の共管で導入された「JC08モード」という方式だ。これはエアコンやカーナビゲーション、照明などをすべて消した状態で燃費を測るので、実際の走行時よりも、かなり良い数字が出ることが多い。
一方、米国では「エアコンをつけた状態」や「寒冷地での走行」など複数の走行状態ごとにガソリン消費量を測り、それらを総合して燃費をはじき出す。
その結果は日米で大きく異なっている。例えばトヨタ自動車の新型「プリウス」の燃費は日本基準ではガソリンリッターあたり40.8キロメートルに達するが、米国基準では同24キロメートルにとどまる。
一般のドライバーから報告を集めて車種別のリアル燃費を調べるネットサイトの「e燃費」によると、プリウスの平均燃費は同20キロメートル台半ばで、米国基準のほうが乗り手の実感に近い。他の多くの車種も同様の傾向にある。
政府は2年後に新たな燃費基準の導入を計画している。米国方式も参考にしつつ、実態に近い計測方法を工夫すべきだ。自動車業界も燃費性能の数値上の悪化に抵抗はあるかもしれないが、消費者目線を重視する必要がある。三菱自とスズキの不正を燃費に対する信頼を取り戻す契機にしたい。
(日本経済新聞朝刊「自動車燃費への信頼を取り戻すために(社説)」2016年5月27日付け)
新しく設定された国際的な燃費基準でガラパゴス脱出⁉
ここで言及されている「新たな燃費基準」とは、現在設定されているWLTPモードのことです。これは国際的な燃費基準のことを指しています。WLTPとはWorldwide harmonized Light vehicles Test Procedureの略で、邦訳すれば「乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法」となります(あるいは、WLTCモード)。
簡単に言えば、それまで各国・地域ごとに異なっていた燃費基準を国際的に調和させることによって開発から流通に至るまでを統一された基準に従って行い、消費者や取引先などに分かりやすく燃費値を表示するものと言えます。
つまり、日本独自の燃費基準ではなく、国際的な燃費基準を日本も採用することで、日本独自である種ガラパゴス化したJC08モードが変更を余儀なくされたことが分かります。先にも述べたように、日本独自のJC08モードは、惰行法という測定困難な方法を現場に促していました。その背後にあったのは、「わが国の消費者に対して諸外国よりも燃費を良く見せること」であったかと思います。