「恥を知れ!」発言は王道そのもの

メディアから強烈なネガキャンを仕掛けられ、強烈なアンチから「ヒトラーの再来」「女帝」「独裁者」などボロカスに叩かれる。しかし、それで潰れるどころか、そのような批判を逆手にとって「抵抗勢力」「反日」「既得権益」「勉強不足」などと攻撃することで、既存のマスコミや敵対する政治勢力に不満を抱く人は胸がスカッとする。そういう戦いを繰り返していくうちに、「日本のためにもこの人を支えなくては」という熱烈な信者が増えていくのだ。

そういう意味では、石丸氏がやってきた手法というのは、YouTubeの切り抜き動画くらいがツールとして新しいくらいで、多くは従来の「戦う政治家」がやってきた「王道」ともいうべきものだ。

例えば、石丸氏の名を広めたのは、市長時代の居眠り議員に対して公然の場で「恥を知れ!」と一喝したことだが、あのように「敵」を厳しく罵ると、「歯に衣着せぬ政治家イメージ」がつくというのは、自民党の三原じゅん子参議院議員を見ても明らかだ。

国会で安倍首相の問責決議案を出した野党に対して、「愚か者の所業」「恥を知りなさい」と発言したことが大きな話題となり、自民党支持者に大バズりし、「恥を知りなさい」とプリントされたTシャツまで発売されるほどだ。

また、メディアの質問を「くだらない」と一蹴して相手にしなかったり、逆に鬼ヅメして恥をかかせるというスタイルは、ありし日の石原慎太郎氏もよくやっていたことだ。政治家時代の橋下徹氏も自分とよく似ていると言っていた。

小池氏も「政治屋の一掃」を掲げていた

そして、何よりも今回、「政治屋の一掃」を掲げたのは、2016年の都知事選での小池百合子氏の戦い方とよく似ている。今や完全に自民党と一体化してゴリゴリの既得権益側にいるが、8年前の小池氏は石丸氏のように「敵を増やして信者を増やす」というやり方をやっていた。

自民党東京都連を「ブラックボックス」だと批判、わかりやすい利権の象徴として内田茂都議(当時)を「都議会のドン」と呼んで、公約にも「利権追及チーム」を掲げた。つまり、「古くてダーティな政治屋を、クリーンな私が一掃しますよ」と訴えたのである。

これによって、自民党支持者からはボロカスに叩かれたが、既存の政治勢力に不信感を抱く人たちが支持に回って、後に都民ファースト結党にもつながる熱心な「小池信者」も生まれてフタを開ければ、290万票の大勝ちをした。「敵を増やして信者も増やす」という戦い方はうまくいけばこれほど効果があるのだ。