初の都知事選で165万票も納得

このように歴代の「戦う政治家」がやってきた手法を、今回の都知事選で最も忠実に実行に移した候補者が石丸氏だった。165万票獲得したのはなんの不思議もない。

ちなみに、蓮舫氏だって熱心に自民・小池批判を展開していたのだから「敵」をつくっていたじゃないかと思うかもしれないが、そういう話ではない。

立憲民主党や日本共産党という政党色を前面に出して現職・自民批判をすれば単なる野党だ。つまり、既存の政治勢力、古い既得権益に不満を抱いている層から見れば、「いつもと同と人が、いつもと同じ批判をしている」という構図にしか見えないのだ。溜飲も下がらないので「蓮舫信者」も生まれない。

だから、2016年の野党共闘候補として擁立されたジャーナリストの鳥越俊太郎氏の得票数(134万票)にも及ばない、128万票で終わってしまったのである。

メディアはもう石丸氏の戦略にハマっている

野党がこんな調子なので今後も「政治家・石丸伸二」の存在感は増していくだろう。もちろん、メディアからすれば久々の叩き甲斐のあるダークヒーローなので、かつての橋下氏のようにやることなすことを執拗に叩かれる。

だが、それこそが石丸氏の狙いでもある。かつて「反安倍」の人たちが、朝から晩まで安倍元首相について論じて、「本当は好きじゃないの?」と疑うほど虜になっていたように、「石丸伸二はアリかナシか」でメディアが大盛り上がりをすればするほど、あの笑顔が国民の脳裏に刷り込まれ、「マスゴミにもの言う本物の政治家」というブランディングが進む。

つまらないことで批判をすることは単に「石丸劇場」を盛り上げて、気がついたらメディアが束になっても敵わない「無敵の政治家」を生み出す恐れもある。バッシング報道は諸刃の剣だということを、メディア側も冷静になって気づくべきだ。

コンサートで盛り上がる客席
写真=iStock.com/Aja Koska
※写真はイメージです
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