自分だけが成果を出すのは精神衛生上よくない

会社組織においては、個人の成果よりもチームとしての成果が重要視されるのは事実です。

まだ新入社員の段階では、個人の成果が評価の中心となることもあります。しかし新人時代を脱してからは、常にマネジャー候補として見られるようになります。

マネジャーを目指すのであれば、組織の階層構造上、マネジメントの対象となる人数が増えるにつれ、プレーヤーとしてのスキルだけでは対応しきれなくなります。そのため、上位の役職に就くためには、チームをまとめ、全体の成果を向上させるスキルが不可欠となります。

実際に、私自身も個人の成果を重視していた時期がありました。自分の仕事の成果を叩き出すことだけしか考えていない時期があったのです。しかし自分だけが目標を達成し、他のメンバーが苦戦している状況では、チームとしての成果に貢献できていないというプレッシャーを感じるだけでなく、チーム全体のモチベーションが低下してしまうことに気づきました。

そこで、チームとして注力すべきポイントや行動を明確にし、可視化するなどの取り組みを行ったところ、状況が改善されたという経験があります。このとき、自分だけが突出した成果を出すことは、精神衛生上も良くないとも実感しました。

成長矢印を指し示すビジネスマン
写真=iStock.com/marchmeena29
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名選手が名監督になれるわけではない

とはいえ、プレーヤーとしての成果を求めている人たちの中には、組織全体の成果が芳しくない中で、自分だけが成果を出している状況をむしろ歓迎する人もいるかもしれません。そのような状況のほうが、成果を出せている自分にスポットライトが当たり、より高い評価を得られると思うからです。

確かに一時的には評価されるかもしれませんが、それが立場を高める評価につながるとは限りません。自分の成果だけを考えているプレーヤーが良いマネジャーになれるとは思われないためです。名選手が名監督になれるわけではありません。

自分の成果だけを高めようとしている人の考え方を変えるためには、自分と他人という軸ではなく、自分と組織という視点で考えることが重要です。チームの中で自分だけが良い成績を収め、他のメンバーが目標を達成できていない場合、チームリーダーとしての資質や責任が問われます。この人では部下の育成はできないだろうと判断されかねません。