最近、旅行先で高齢者グループの姿を見かける機会が多いように思える。しかし、調査では「旅行で外出することが多い」と答えているのは約7%にすぎない。
だが、そうした中でも「アクティブなのでは?」と感じさせる層がある。それがデジタル高齢者だ。外出目的を「旅行」とした人の中では、PC保有、タブレット保有者に限ると15%超となり、平均の2倍以上になっている。また、外出目的を「スポーツ」と回答している人は、タブレット保有者では2割超と、平均の2倍に達している。
スマホやPCを持っている「デジタル高齢者」に限ると…
こうした結果から、アクティブシニアは全体的に見れば、昔も今もそれほど存在していないように思える。しかし、高齢者全体をひとくくりにせず、ことPCやタブレット、スマホを保有し、活用している層に限ると違った光景が見えてくる。
つまり、現代において、アクティブシニアは確かに存在し、それは紛れもなく「デジタル高齢者」である可能性が、調査から浮き彫りになった。
加えて、生活満足度についても尋ねると、非自立より自立、可処分所得なしより可処分所得あり、単身(単独世帯)より配偶者のみ(夫婦のみ)や子供と同居のほうが、満足度が高い傾向が出た。そして、保有端末別では、その他(いわゆるガラケー)よりも、スマホ保有、PC保有のほうが満足度が高いという結果が導き出された。
すなわち、デジタル高齢者は実際の行動がアクティブなだけでなく、内面も満たされた毎日を送っている傾向が示唆されたわけだ。
「推計2222万人以上」の巨大マーケットが広がっている
令和のアクティブシニアがデジタル高齢者であるならば、高齢者マーケティングで狙うべきは、言うまでもなくこのデジタル高齢者だ。
より人間関係数が多く、外出する頻度も高く、旅行やスポーツを行う傾向も高いのであれば、例えば人との交際や外出をする際、あるいは旅行やスポーツをする際に消費する機会が多くなる可能性があるからだ。また、PCやスマホを保有しているため、個別に情報を届けやすく、セグメントをしたマーケティングもしやすい。
ただし、デジタル高齢者に限った場合、市場規模がそれほどないのでは、マーケティング対象としてのメリットはなくなる。
では、そのマーケット規模はどれくらいだろうか。今回の調査では、「PCやスマホ、タブレットのいずれかを自分専用で保有する人」をデジタル高齢者と定義した。その保有状況は次の通りだ(図表6)。
結果、デジタル高齢者は推計2222万人以上いることが見えてきた。(総務省統計局による、令和3年7月報の概算値と本調査結果より算出)。これは高齢者(60代以上)人口である4357万人(60代:1533万人 70代:1638万人 80代以上:1185万人)のおよそ半分に当たる規模である。
半分とはいえ、台湾(約2300万人)と同じくらいの人口規模となっており、デジタル高齢者にセグメントしても、巨大なマーケットであることに変わりはない。