1980年では世帯構造の中で三世代世帯の割合が最も多く、全体の半数を占めていたが、2021年(令和3年)では夫婦のみの世帯と単独世帯(一人暮らしの高齢者)が、それぞれ約3割を占めている状況だ。
特に注目すべきなのが、単独世帯が一本調子で増えていることだ。将来的には夫婦のみを抜いて最大になる可能性がある。日本では女性より男性の年齢のほうが上で結婚する率が非常に高く、現時点の高齢者ほどその傾向は顕著だ。さらに、女性のほうが平均寿命が長く、夫と死別した女性の単独世帯が多いことが要因となっている。
その他、未婚率、熟年離婚率も上昇傾向にあり、独り身の高齢者の増加が加速している。若い世代や現役世代でも、未婚率の上昇で「おひとりさま」市場が広がっており、ますます単独世帯が増えていくことを念頭にマーケティングは考える必要がある。
人付き合いが活発な「デジタル高齢者」
それでは、調査結果の話に移ろう。基礎情報として最初に触れておきたいのが、高齢者の生活の実態だ。高齢になると、人付き合いが減っていく傾向になるといわれている。
実際の状況はどうかというと、今回の調査から、高齢者が定期的に接する人数(人間関係数)は平均9.52人であることが分かった。平均より少ないのが「80歳以上」「可処分所得なし」の層であることから、やはり高齢になるほど付き合う人数は減り、そこにはお金があるかないかも関係してくる。
一方、定期的に接する人数が平均より多い層は、高齢者の中でも若い「60代」、仕事を続けている人も多い「男性60代」、お金を持っている「可処分所得あり」の層であることが明らかになった。
特筆すべきは、「PC保有」「スマホ保有」層の人間関係数が多くなるという事実だ。つまり、PCやスマホを持って日常生活でそれらを活用している、いわゆる“デジタル高齢者”のほうが、人付き合いが多いという傾向がデータから読み取れるのだ。
また、外出頻度に関しては、「ほとんど毎日外出」が約半数に及ぶ。内訳を見てみると、「男性」や「60代」「自立」で多いことに加え、こちらも「PC保有」「スマホ保有」が平均を上回っている実態が目立つ。
「アクティブシニア」は今も昔も少数派
では、高齢者はどこに外出しているのか。外出目的を聞くと、「日常的な買い物など」が7割以上と圧倒的だった。次いで、大きく差が開いて「通院」「仕事」を挙げている。シンプルにいえば、外出するといっても、多くは近所の商店街やスーパーでの買い物目的というのが実情だ。
この結果から見えてくることは、その昔、広告代理店が躍起になって盛り上げた「アクティブシニア」は、現状でも多数派でなく、むしろ外出したとしても近所のスーパーという「非アクティブシニア」が目立つという実態である。