TOPIC-1 自分を「ブランド」として扱う本

連載の第3テーマ「年代本」の回では、自己啓発書はただ自分の考えや行動を変えようとするだけではないことを論じました( http://president.jp/articles/-/7360 )。具体的には、啓発書はときに恋愛論、家庭生活論、消費のすすめ、若者論といった容貌を見せるのだ、と。

「年代本」の回では簡単に触れた程度だったのですが、こうした容貌の1つに「つながり」を論じるというものがあります。「年代本」で言えば以下のような言及です。

「メンターの質が人生を決める(中略)メンターとは、『人生を導いてくれる先生』を意味する言葉です」(本田健『20代にしておきたい17のこと』130p)

「四十代にもう一つやっておいたほうがいいことがある。それは自分が住んでいる地域社会への積極的な参加ということだ」(川北義則『男が40代でやっておくべきこと』166p)

このように、自分自身の成長、社会貢献、あるいはビジネスチャンスの拡大等、その目的はさまざまにあると考えられますが、自己啓発書はときに他者との「つながり」のあり方をも啓発します。では、啓発書はどのような「つながり」を読者に求めるのでしょうか。これが今回のテーマです。

このテーマについて考えるにあたり、どのような書籍が素材として適切でしょうか。いくつかの容貌を見せるとはいえ、自己啓発書とは基本的には、自分自身の考えや行動の変革を主内容とする書籍ジャンルです。しかし近年、あるフレーズを切り口として、他者との「つながり」のあり方に多く言及する啓発書が現われるようになってきました。

そのフレーズとは「セルフブランディング」です。ほぼ同義の言葉として「パーソナルブランディング」「自分ブランド」といったものもあります(これらの用法は一様ではありませんが、今回はこれらを総称して「セルフブランディング」と括ることにします)。読んで字のごとく、これらの言葉の意味は、自分自身をブランドとして扱うということです。この言葉を扱う書籍において、ブランドとしての自分を買ってくれる他者との「つながり」に関する言及がかなりまとまったかたちで観察できるのです。そこで今回は、このセルフブランディングに関連する書籍を素材とすることにします。