「幸い私の部下はみんな、商品がヒットしたからといって天狗にはならないですけど、ヒット商品を企画した子はテレビに出たりもする。だから常に彼女らには、厳しい数字を管理するメンバーの苦しさも共有するように言っています」

岡山氏は褒めると同時に苦言を呈することも忘れない。

「もしこれがカルチャーじゃなくてブームで終わったら、来年は一気に地獄。実るほど頭を垂れるナントカやで。ヒットしてるときこそ、俺もおまえも謙虚でいこうな」

いまでこそチームを見事にまとめあげている岡山氏だが、最初はビューティ・ヘルスケア商品は専門外。もとから部署に居たスタッフに、何も知らない人がやってきて、しかも上の立場でいろいろ口を出す、という思いがあっても不思議ではない。それも想定して岡山氏はメンバー1人ひとりと面談することに最初の1カ月を費やした。

「とにかくあなたの知識を貸してほしい、助けてほしいと。カルチャーをつくるために、協力してくれないかというスタンスでした」

面談の中で、スタッフたちに過去に手掛けた商品の特徴を細かく聞いていった。そのとき目にとまったのが、お風呂で使える電気シェーバー。水洗いできるというレベルを超えて、完全防水でお風呂でも使える機能を持っていたが、開発者はそのすごさに気がついていなかった。

しかし岡山氏はそこに着目して亀梨和也さんをCMに起用し、若い世代に向けて「朝、シャワーを浴びながら電気シェーバーを使う」という新たなカルチャーを提案。するとそれまで「おじさんぽい」と若者から敬遠されていた電気シェーバーの市場が若者によって活性化し、その後、中高年の人気も高まったという。

「こう言うと私だけがかっこいいみたいですが、本当にメンバーには恵まれました。面白いことに人間って成功すると味を占める。古くからのメンバーも自然と新しいカルチャーをつくろうとしてくれました」

部下の顔を思い浮かべたのか、岡山氏はニコリと笑った。

※すべて雑誌掲載当時

(小原孝博=撮影)
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