一部のお金持ちだけの話ではない。北部の1軒目、サンベルトの2軒目も当然ローンで購入する。払いが2重になって苦しくなるようにみえるが、リゾート地の2軒目は普段は管理会社に任せて人に貸しており、ローンの支払いは相殺できる。

リタイアしたら1軒目は売却する。日本もそうだが、大都市圏はたいてい中長期で地価が値上がりする。売却益を老後資金にしてリゾート地で悠々自適に暮らすのだ。アメリカ人は貯蓄をしないと思われているが、アメリカの中産階級も不動産で資産形成し、無理なく老後を迎えている。

そうしたビジネスパーソンが移り住んで成長しているのが前出の都市たちだ。ラスベガスは元から大都市だったわけではなく、昔は砂漠の中にポツンと存在するギャンブルを中心とした観光都市であり、人が暮らす街ではなかった。しかし今や定住人口が増えて、1990年に74万人だった、ラスベガス都市圏(クラーク郡)は2020年時点で226万人になった。

昔との比較で言えば、オーランドもすごい。ウォルト・ディズニーがディズニーワールド建設の場所として目をつけた60年代、沼地が広がるオーランドは人よりもワニの数のほうが多いと言われていた。ディズニーワールドが開園したことで、それを餌に孫を呼べると考えて高齢者が移住。今では都市圏人口が240万人に大成長している。

同じような人の流れはヨーロッパでも起きている。ドイツや北欧、イギリスの人は国内よりも暖かい、スペインのコスタ・デル・ソルやポルトガル、クロアチアのアドリア海沿岸で休暇を楽しむ。私がヨットをチャーターしてクロアチアやギリシャの海岸を2週間旅したときも、港は同じように余暇を楽しむヨットでいっぱいだった。

地元の人は友好的で、ヨットを停泊できる場所がなくても、ロープを渡して先に停泊中のヨットの隣につけさせてくれた。船をつけようとすると漁師に追い返される日本の港と大違いだ。

レジャーで訪れた人がその土地を気に入ってセカンドハウスを買うケースもある。地元の人が親切なのは、外からやって来た人がお金を落としたり移住したりして、街を潤すことを知っているからである。

しかし、日本の場合は「つい棲家すみか」という言葉があるように、一度居住した場所から離れない傾向がある。都市圏には地方と違い、働き口があるから、若者は集まり、そして定住する。

「高齢者はいらない」は間違いだ

人口減少に悩む、とある県の知事と話をしたとき、「老人は移住してこなくていい。若者に来てほしい」と言っていたが、リタイアした高齢者の移住が自治体の負担になるだけと考えるのは間違いだ。お金を持った高齢者人口が増えれば、医療や介護、レジャーの雇用が生まれ、若い世代も流入する。事実、千葉の稲毛で友人の経営しているアクティブシニアタウンに私も経営参加しているが、実に多くの若者たちが働いている。高齢者は若者の職を生む、という発想が自治体から抜け落ちている。

地方公共団体も発想を変える必要がある。小手先の少子化や税金を使った人口減少対策ではなく、人々をきつけるため、レジャーやセカンドハウスのプロモーションを行うべきだ。沖縄や静岡などの温暖な地域は有利だろうが、寒冷地であっても、北海道のニセコなど一部のスキーリゾートは海外からも移住者がいて人口を維持している。

地域国家(リージョンステイト)の時代には人の移動を味方にした地方が消滅を免れ、繁栄を呼び込み活気づくのだ。

(構成=村上 敬)
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