睡眠障害の悪循環で膨らむ「睡眠負債」

睡眠は、脳が活発に働くレム睡眠と、脳が休息状態にあるノンレム睡眠で構成されています。眠りにつくと、まず深いノンレム睡眠が現れ、その後レム睡眠が現れます。レム=REMとは、Rapid Eye Movementの略で、レム睡眠の際に、寝ている人の眼球が急速に動いていることを示します。そのサイクルは人によって違いますが、およそ約90~120分の周期で繰り返され、朝に向けて徐々に浅いノンレム睡眠が増えていきます。高齢になると深い眠りが減り、中途覚醒が増えてきます。認知症の人では睡眠の質はさらに低下します。

[健康な人の例]ノンレム睡眠・レム睡眠の周期

日中の活動を通して五感から得られた情報は脳に一時的に記録されます。夜、眠りに入ってノンレム睡眠時に脳を休ませ、レム睡眠時になると、日中に記録された情報は編集され、脳に保存されます。人は、この間に夢を見ているのです。日本国内で動物を使って行われた最近の研究で、レム睡眠中に大脳皮質の毛細血管への赤血球の流入量が大幅に増え、脳がリフレッシュされることがわかってきました。レム睡眠は人の記憶にとって重要な要素で、レム睡眠が不足すると認知機能が低下し、認知症の発症につながります。実際、認知症患者ではレム睡眠が減少していることが確認されています。