これまで私にも多くのライバルがいましたが、最終的に勝てたのはこの「トップを目指す」気持ちの強さがあったからでしょう。

社長をライバルに見立て、そのポジションを本気で目指せば目の前の課題だけでなく大きな視点でものごとを捉える習慣がつく。

この時点で狭い視野で汲々とするライバルに一歩差をつけられる。目標が部課長ではなく組織の頂であるため努力が長続きするのです。努力が長続きすると、自分なりの戦略も持ちライバルに勝る武器を持とうと絶えず精進できます。上司に依存せずに自分でものを考え行動するので知恵もつきます。

それに社長以外をライバル視しないから、些細なことで怒られても過剰に落ち込むこともなく、くだらない嫉妬も必要ありません。ライバルより精神的に優位に立つのです。大きな目標があれば休日の過ごし方も変わる。ムダな時間をなくし自己投資や人脈づくりの時間を増やそうとします。社長らしい広範な知識を身につけるべくあらゆる本を多読精読するのです。

そうやって日々を過ごすと、真の実力がつく。努力の日々を重ねると、その実力は、単に社内で通用するレベルのものから同業他社、さらには異業種でも通用するオールマイティなものに進化します。そうなれば怖いものはありません。

もちろんライバルも黙ってはいない。簡単には勝てません。そこで大切なのは敵を知ることです。

今の会社に赴任して私が最初にしたのはライバル企業への挨拶。彼らの多くは銀行からの出向者でカード事業の経験はなく、しかも2~3年で銀行に戻るのです。そこがライバル企業の弱点でした。こちらもノウハウや人脈がなかったけれど、カードの時代がくるという先見性とやる気だけはあった。だから「勝てる」と思ったのです。

相手の苦手な部分を発見したら、そこで勝負する。もし相手がエリート大出身で細かい仕事を嫌がる腰が重いタイプなら、自分は泥臭く顧客のもとへこまめに足を運び面倒臭い仕事を引き受ける。相手の弱みを逆手に取るのです。

ただ、どうしてもライバルにかなわない場合は、無理して戦ってもノイローゼになりますから、潔く撤退して違う土俵でリベンジする勇気も必要でしょう。

クレディセゾン社長 林野 宏
1942年生まれ。埼玉大学卒業後、西武百貨店入社。82年西武クレジット(現・クレディセゾン)に転籍し、2000年より現職。
(構成=大塚常好 撮影=小原孝博)
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