マーケティング視点で部下との関係を再構築

日本コカ・コーラ元会長 
魚谷雅彦氏

ドラッカーは「企業の基本的機能はイノベーションとマーケティングだ」と喝破しました。イノベーションは日本語では「革新」ですがマーケティングには適切な言葉がない。調査や広告という人もいますが意味が狭すぎます。私に言わせると、マーケティングとは、お客様とのつながりをどうやって強めていくか、お客様の求めるものにどうやって応えていくかという価値創造のための仕組み、プロセス、企業文化のこと。まさに経営に直結する重要な柱なのです。

マーケティングを重視すると、企業と顧客の関係が様変わりします。一方的に企業が商品を売り込むプロモーションに代わり、顧客から企業への情報提供も含む双方向の「コミュニケーション」が非常に大切になるのです。

「部下に恵まれないなあ」と思っている管理職がいたら、このマーケティングの考え方を応用し、部下との関係を再考してみることをお勧めします。部下とのつながりをどうやって強めていくか、自分の求めているものと部下の求めているものをどうやって一致させていくか、ということですね。

部下の不出来を愚痴る前に、自分は部下にとってどんな上司なのか、コミュニケーションは的確にできているのかどうか、部下が自発的にイキイキ働けるような環境づくりを十分にやっているか、自問自答してみてください。

私が日本コカ・コーラに上級副社長として入社したのは1994年、39歳のとき。当時、競合他社のウーロン茶がヒットしていて、自社で出したウーロン茶飲料も、まずまずの売り上げをあげていました。でも先行する競合社にはかなわない。そこで、「ウーロン茶以外の新しい発想の新製品を考えてみよう」と、ことあるごとに部下たちと話していたのです。