部下がついてくる上司は何が違うのか。大企業の収益・生産性改善に取り組んできたトリノ・ガーデン代表取締役の中谷一郎さんは「あるファストフードチェーン店でスタッフのミスが多発していた。原因を調べたところ、マネージャーの叱責でスタッフの心拍数が大きく変動したときにミスが増えていることがわかった」という――。

※本稿は、中谷一郎『中間管理職無理ゲー完全攻略法』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

経営に悩む飲食店の女性従業員
写真=iStock.com/mapo
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部下に「適切な自信」をつけさせるには

【無理ゲー】
一見職場に馴染み、うまく立ち回っていそうなスタッフが、「自信がない」と悩んでしまう

職場に馴染んでいると思っていたスタッフが「自分がチームにいることで迷惑をかける」「自分がいないほうが現場にとってはいいのでは」と思い悩んでいるという。そんなことはなく、むしろいてくれないと回らないのに。部下に適切な自信をつけさせるにはどうすればいいのか。

【攻略法】
▶️顧客や同僚に喜んでもらえたと認識できる機会を創出する
スタッフが積極的に顧客やチームに対して働きかけをし、これを喜んでもらえれば、自ずとそのスタッフの自信につながります。本書86ページの事例でも解説した通り、スタッフが誰かに感謝されたり、喜んでもらったりするという、成功体験を得る機会は組織のほうで無理やり作ることもできるはずです。

▶️些細な気遣いやサポートなどのファインプレーを可視化する
スポーツ番組のように、スタッフのファインプレーが紹介されるような職場は稀です。一人ひとりの気遣いやサポートなど、日々埋もれがちなスタッフのファインプレーを積極的に可視化し、動画や言葉などでチームに共有しましょう。ファインプレーをした本人だけでなく、職場全体のやる気を活性化させることにつながります。

店舗の改装で組織風土が改善

アルバイトスタッフがすぐに辞めてしまうという課題を抱えたある飲食店で、内装の大幅リニューアルを実施しました。この飲食店では、それまで毎月1~3名の離職者が発生していたにもかかわらず、改装から12カ月以上離職ゼロが続くという結果になったのです。

これに加えて、スタッフのリファラル採用が8名も決まったのです。リファラル採用とは、社員やアルバイトスタッフの紹介による採用のことです。つまり、実際に働いているスタッフが、「うちの会社、働きやすいからおいでよ」と知り合いを紹介してくれるようになったわけです。

もともとリファラル採用制度はあったものの、オープンから7年間、まったく活用されていなかったのに、改装を経てスタッフたちの認識が変化したということです。

この背景にあるのが、組織風土の改善です。

このプロジェクトの際に、我々は改装前後のスタッフの変化を見るために、組織内の価値観や成長意欲、危機感や満足度を測る「組織風土診断」を実施していました。

図表1を見ると、改装前に比べ、改装後はほとんどの項目で改善に転じていることがわかります。もっとも変わった部分が「仕事の自信」。