容易ではない「脱ネイバー」
LINEヤフーは、発足にあたって、ソフトバンクとネイバーのパワーを組み合わせることで、日韓の枠組みを超えて世界の巨大IT企業に対抗しうる存在になるという目標を掲げた。だが、個人情報漏洩事件でスタートからつまずき、ネイバーと距離を置く必要に迫られ、当初の目論見はすっかりしぼんでしまったかのようにみえる。
ソフトバンクの宮川潤一社長は、5月9日、中間持ち株会社Aホールディングスの株式を買い増す方針を明らかにし、ネイバーも10日、「株式の売却を含めあらゆる可能性を開き、ソフトバンクと誠実に協議していく」と表明。双方が資本関係の見直しについて友好的に協議を始めていることを明らかにした。
だが、ソフトバンクの出資比率がネイバーをわずかに上回る程度の決着では、実質的な効果が得にくい。とはいえ、大幅な出資比率の変更となると、ネイバーもおいそれとは乗れそうにない。LINEヤフーへの支配力が弱まることを懸念するネイバーが難色を示す一方、ソフトバンクにも株式を買い増す積極的なメリットが見当たらないとあって、交渉は難航しているようだ。
宮川社長は「報告書を提出する7月1日までにまとまるのは非常に難易度が高い」と、長期戦を覚悟しているように見受けられる。
LINEヤフーの出沢剛社長は、個人情報流出の原因となったネイバーへの委託をゼロにすると明言、ネイバーと距離を置く姿勢を強調している。だが、資本関係の見直しを自ら仕掛けることはできそうにない。
落としどころを見つけられずに交渉が暗礁に乗り上げるようだと、「せっかく好転した両国関係に水を差しかねない」と懸念する声も少なくない。
一民間企業の思惑を飛び越して、両国の政府がさらに介入するようなことになれば、問題が複雑化し、打開の糸口が見出せなくなるかもしれない。
「日の丸SNS」への期待は高まるが、「脱ネイバー」は容易ではなさそうだ。
いずれにせよ、LINEユーザーの1人として、個人情報漏洩事件が二度と起きないよう、利用者が安心して利用できる安全対策が一刻も早く整備されることを願ってやまない。