行政指導をないがしろにされた総務省は「LINEヤフーは事態を甘く見過ぎている」と、わずか2週間後の16日に、異例ともいえる2度目の行政指導を行った。

そこでは、「通信の秘密の保護およびサイバーセキュリティー確保の観点で、安全管理措置および委託先管理が十分なものとなったとは言い難い状況にある」と、再発防止策を練り直し、あらためて資本関係の見直しを加速するよう迫った。

総務省
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2度にわたって強調されたのは、ネイバー依存の体質から脱却するためには、共通で利用してきたシステムの分離だけでなく、ネイバーの出資比率を引き下げて影響力を排除しなければ、有効な再発防止策を確立できないということだ。

つまり、ネイバーの介入を受けないように出資比率を見直せということであり、それはソフトバンクにネイバーの持つ株式を買い取るように求めることを意味していた。

遡れば、旧LINEは21年3月、個人情報が中国の関連企業からアクセスできる状態だった問題で行政指導を受け、旧ヤフーも23年8月、利用者への周知が不十分なまま個人情報を外部に出したとして行政指導を受けている。

LINEヤフーは、個人情報漏洩の常習犯だったともいえる。

個人情報保護委員会の是正勧告でも対策が進まない

政府の個人情報保護委員会も3月28日、LINEヤフーが個人情報を扱う際の安全管理体制に不備があったと断定、個人情報保護法に違反したとして行政指導より重い是正勧告を出した。

流出した情報は、個人の行動範囲やプライバシーに関するデータで、「不適正に取り扱われた場合、本人の権利や利益に対する重大な侵害につながるリスクがある」とされ、LINEヤフーは、データ管理の責任の所在があいまいなまま大量の個人データを取り扱っていたと指摘した。

LINEヤフーは4月26日に改善状況を報告したが、同委員会は5月22日、17項目の改善事項のうち、ネイバーのシステムとの間のファイアウォール設置など4項目しか完了していないと発表、残る13項目について6月28日までに改善策を報告するよう求めた。

LINEヤフーの個人情報保護の改善策が遅々として進まない状況に、苦虫をかみつぶしている様子がみてとれる。

たび重なる行政指導や是正勧告は、LINEヤフーが個人情報保護の重要性の認識を欠き安全管理に甘さがあったことを物語っている。経営陣は日本を代表するSNSを提供しているという自覚が足りなかったと言わざるを得ない。

韓国国内は「LINEが日本に強奪される」と猛反発

個人情報漏洩事件が政治問題に波及し始めたのは、2度目の行政指導が出てからだった。

ネイバーは「資本の支配力の縮小を求める行政指導自体が非常に異例。われわれが中長期的な事業戦略に基づいて決定する問題だ」と反発、韓国政府と協議しながら対応を検討すると表明した。ネイバーの労働組合も、株式売却に反対する声明を出し、「売却されれば雇用不安が広がる」と訴えた。