今の高齢者は「昭和の麻雀ブーム」を知っている世代

現在でこそ「Mリーグ」で盛り上がりを見せる麻雀だが、実は約半世紀前にはもっと大規模な麻雀ブームがあった。小説家・阿佐田哲也氏の『麻雀放浪記』が大ヒットしたことや、自身で結成した「麻雀新撰組」のテレビ番組での活躍などにより、麻雀人口は激増。「レジャー白書」に残る最も古い記録である1982年には、麻雀人口が2140万人を数えている。現在の麻雀人口がおよそ500万人と言われているので、比較すると、4倍以上の人々が麻雀に親しんでいたことになる。

「現在デイサービスを利用される世代で、特に男性は若い頃にはどんな形であれ麻雀に一度は接したことがありますし、楽しかった思い出もあるでしょう。ただ、高齢になって体が弱り、街の麻雀店に足を運ぶのが難しくなってきている方がいるのも事実。ウェルチャオでは、そうした方々に気兼ねなく麻雀を楽しんでいただくことをテーマとしています」(金さん)

ウェルチャオには金さんをはじめ、麻雀プロとしても活動するスタッフが10人以上在籍している。中には介護福祉士や看護師の国家資格を持った麻雀プロもいる。

デイサービスとして利用者をケアできる体制を整えつつ、麻雀に関してもゲーム進行を円滑に行えるようにサポートしているのは、麻雀店を母体に持つ同所だからこそ成せる大きな特長の一つだ。

ウェルチャオ提供
ウェルチャオの利用者と麻雀を楽しむ小林剛さん

「麻雀を打つとキリッとする」

ウェルチャオを主に利用するのは要介護1~2の日常生活に介助を必要とする人たちだ。送迎車で午前9時半ごろ施設に着くと、体操や昼食、リハビリなどをはさみつつ、午後5時ごろまで麻雀に精を出す。

実際に牌を手にすることで、過去麻雀に親しんだ日々を思い出すのか、明らかに様子や手つきが変わるという。

先日閉幕したMリーグで優勝を果たした「U-NEXT Pirates(パイレーツ)」の小林剛さんは、時折ウェルチャオで利用者と共に卓を囲むプロのひとりだ。

「みなさん『早く打とうぜ』という雰囲気で、すごく麻雀を楽しんでくれています。おそらく昔はいろいろな形で麻雀をやっていたのでしょうね、中にはしっかり相手の手を読んでいて、上手だなと感じる方もいます。認知症だったり体が不自由だったりで日常生活がままならないという方も、麻雀を打つとキリッとするんです。それはすごく面白いなと感じますね。何かあったときには看護師さんなどが来てすぐに対応してくれますし、普通に打っている分には、本当に街の麻雀店と変わらない感じなんですよ」(小林さん)

麻雀卓を備えた広いレクリエーション室
麻雀卓を備えた広いレクリエーション室(ウェルチャオHPより)
介助機能を備えた浴室など、デイサービスに必要な設備は整っている
介助機能を備えた浴室など、デイサービスに必要な設備は整っている(ウェルチャオHPより)