いびきをかくパートナーの横で寝ると、不眠症リスクは3倍に

睡眠離婚は海外のソーシャルメディアでも流行するなど、トレンドになっている。米CBSニュースは昨年12月、「パートナーによる睡眠のトラブルを避けようと、別々に寝る『睡眠離婚』を始める人が増えている」と報じている。フォックス・ニュースも同年7月、「より良い睡眠を求め、夫婦共同のベッドをあきらめるアメリカ人が増えている」と報じた。

デイリー氏夫妻のように、どちらか一方が就寝中にいびきをかく場合、睡眠離婚を取り入れたほうがいいかもしれない。

いびきなどを伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の患者がパートナーに及ぼす影響を調べた2017年の研究によると、OSA患者のパートナーは、眠れなかったり夜中に目が覚めたりするなどの不眠症状を生じるリスクが通常の3倍高く、日中の疲労感などに悩むリスクも2倍高いという。

夫のいびきにイライラする女性
写真=iStock.com/Kiwis
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2009年の研究では、いびきをかく男性パートナーと共に寝ている女性を対象に、1晩だけ独りで寝た場合の睡眠への影響を調査している。眠りの質が向上していることは客観的に測定できなかったものの、中途覚醒の数と浅い眠りの割合については、有意に減少していることが確認された。週に数日別室で眠るだけでも、さわやかな朝を迎えられる機会は増えそうだ。

睡眠離婚はポジティブな選択肢になる

パートナーの睡眠サイクルが乱れている場合にも、睡眠離婚は有効だ。アメリカ睡眠医学会のコンサルタントであるエリン・フリン=エヴァンス博士は昨年7月、CBSニュースに対し、「例えば片方が不眠症の場合、もう片方も同じタイミングで目が覚めてしまう傾向があります」と指摘している。「同様に、片方が夜型でもう片方が朝型というように、パートナー同士で睡眠のパターンが異なる場合にも、両者の睡眠に悪影響を及ぼすおそれがある」と指摘している。

信頼の置けるパートナーと一緒に眠ることは、本来であれば大切な生活の一部だ。しかし、一緒に眠ることでお互いが寝不足で険悪になるとすれば、本末転倒でもある。寝室を分けるだけで気持ちの良い毎日を過ごせるならば、睡眠離婚は検討に値するだろう。

もっとも、問題がない場合は無理に別室で眠る必要はないと指摘する専門家もいる。米医療NPO「アレゲーニー・ヘルス・ネットワーク」の睡眠スペシャリストであるダニエル・シェード医師は、CBSに対し、一緒に寝られるのなら「ぜひ同じベッドで寝たほうがいい」と語る。

「(肌の接触によって)私たちは、(神経ペプチドの一種で『幸せホルモン』とも呼ばれる)オキシトシンや、その他“抱擁ホルモン”と呼ばれる化学物質を分泌します。私たちの気分を向上させますし、一緒にいることを実感できるため、相手との距離を縮めてくれます」