メタボ健診の間違いを厚労省は知っていた?

やせているほうが長生きというのも、明らかに間違いです。やせているほうが健康的だと多くの人が思うのは特定健康診査、いわゆるメタボ健診のせいでしょう。この検査では腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上、またBMI値が25以上だと指導の対象となります。ではBMI値が基準値を超えていると短命かというと、そんなことはありません。BMI値が25を上回るぽっちゃり体形の人のほうが、基準値に収まっているすらっとした人よりも長生きなのです。

実はこの事実を示すデータは、メタボ健診が始まる 08年の3年前に明らかになっていました。もちろん厚労省も知っていたはずです。それなのにメタボ健診を始め、いまだに続けているのはなぜなのか。まさかとは思いますが、もしかしたら年寄りを早く殺して年金財政を楽にしたい財務省が厚労省に圧力をかけたのかもしれないと疑いたくもなります。とにかく中高年になってからやせても、いいことなんてひとつもないと思って間違いありません。もっとも短命なのはやせ型といわれるBMI値が18.5未満のグループなのです。

また、若いころなら多少栄養が足りなくても、体力があるので乗り切れますが、年をとるとそうもいっていられません。筋肉量が減って活力が低下するフレイルや、寝たきりになるリスクが一気に高まります。高齢者にとっては食べすぎよりも食べなさすぎのほうが、明らかに体に悪いどころか危険なのです。40歳以上で身長が165センチなら68.1~81.7キロ、170センチなら72.3~86.7キロ。これが長生きする本当の適正体重です。これだと見た目は小太りでぽっちゃりですが、気にする必要なんてないのです。

【図表】実は長生きしている太めの人たち

酒やたばこをやめれば長生きできるというのも誤った認識です。まず酒。たしかにWHOはアルコール摂取の害をうるさくいっていますが、それは依存症への警鐘です。たしかに若いころに比べて代謝能力の落ちた高齢者が毎晩酩酊するまで飲酒を続ければ、行きつく先はアルコール依存症になりかねません。ひとり飲みは習慣にならないよう注意すべきです。ただ、80代の肝臓であっても適量であれば十分代謝できますから、みんなで集まって飲むのが好きで、それがストレス解消になるという人は、我慢しないで楽しんだほうがメリットは大きいといえます。

たばこは百害あって一利なしの典型のようにいわれていますが、70歳を過ぎたらもう気にしないこと。吸いたい人は好きなだけ吸えばいいというのが私の意見です。おそらく70代になるまでたばこを吸い続けて肺がんになっていないなら、その人はたばこに対し耐性があると考えられます。実際、私が勤務した浴風会病院に併設された老人ホームでは、喫煙者と非喫煙者の生存曲線には差がありませんでした。それに、その年齢になったら、好きなたばこをやめることによって生じるストレスのほうが体に悪いといえます。

【図表】メタボ検診義務化以降の医療費と対国民所得比、血中総コレステロールの三部位別うつの進行度