脂肪摂取が減ったので寿命が下位に落ちた沖縄

世界では19世紀の後半から20世紀にかけて国民の平均寿命が50歳の壁を超える国が次々と出てきました。その順番を見ると見事に年間1人当たりの食肉消費量の順番と一致しているのがわかります。ちなみに日本人の平均寿命が男女とも50歳を超えたのは1947年です。その日本で長らく長寿を誇ったのが沖縄。これにも肉が関係しています。

沖縄の食文化は日本の他の地域のように仏教の影響を受けておらず肉食の禁忌がありませんでした。それゆえ昔から肉がよく食べられており、80年代の調査では1人あたりの1日の脂肪摂取量が全国平均を5グラムも上回っていました。しかし、その後食生活に本土の影響が強まると徐々に脂肪摂取量が減り、ついには全国平均を2グラムも下回るようになりました。その結果、00年には、沖縄県男性の平均寿命ランキングは26位にまで下がってしまったのです(今はもっと落ちているはずです)。

なお、長寿を誇っていたころの沖縄よりも、さらに多くの肉を食べていたのがハワイ在住の日系人。気になって調べてみると案の定、より長生きなのは後者のほうでした。

【図表】ハワイ日系人の食生活タイプ別脳内小動脈ラクナー梗塞の頻度、沖縄県民1日あたりのエネルギー

ただし、極端に肉ばかり食べたら、今度はアメリカ人のように心筋梗塞のリスクが高まります。そこで、魚も食べる。これでバランスがとれます。アメリカと同様に食事で動物性タンパクを多くとっていたイギリスやドイツでも、心筋梗塞は長らく国民の死因の上位を占めていました。

ところが同じヨーロッパでもフランスは、心筋梗塞で死ぬ人がアメリカの3分の1と少なかったのです。フランス人が飲む赤ワインに含まれているポリフェノールに心筋梗塞を抑制する効果があるのではないかと、一時期ポリフェノールに注目が集まったのですが、実際にカギを握っていたのは魚でした。おもに青魚にはDHAという動脈硬化の予防効果がある成分が含まれています。アメリカ人はステーキ、イギリス人はローストビーフ、ドイツ人はソーセージと肉ばかり食べるのに対し、肉も魚も両方食べるフランス人は、知らず知らずのうちにDHAをからだに取り込んでいたため、同じだけ肉を食べても心筋梗塞を発症する人が少なかったのです。

その後の調査で、フランスの近隣諸国であるイタリア、スペイン、ポルトガルといった国でも、心筋梗塞の死亡率がほかのヨーロッパ諸国に比べてはるかに低いことがわかったのですが、やはりこれらの国でも魚が多く食べられていました。韓国人や日本人に心筋梗塞が少ないのも、魚を食べる食文化だからだといえます。魚が苦手だという人は、DHAをサプリメントでとるといいでしょう。サプリについてはいろいろな意見があるようですが、足りない栄養素を補う手段としては間違いなく有効です。特に年をとると過剰よりも不足の害のほうが大きいので、積極的に活用したほうがいいと思います。

日本人に不足しているたんぱく質、脂肪、コレステロールを効率的に摂取するには、牛乳もお薦めです。牛乳は成長期の子どものためにだけあるのではありません。むしろタンパク質が不足すると筋肉が落ち、肌の張りがなくなる中高年こそ積極的に飲むべきです。日々の食事に牛乳を一杯加えるよう心がけてください。

【図表】牛乳を飲む習慣と生存率