目の前で怒鳴っているのは「助けてもらいたい人」

Aさんのカウンセリングでは、不安をなくして心を安心感で満たすことを目標に、さまざまなワークを行いました。過去の嫌な記憶や未来の不安に意識を向けず、五感を使って今ここに意識を集中させるだけでも不安は軽減されていきます。また、軽視されがちですが、上質な睡眠をしっかりと確保することも重要です。

さらに新しい趣味に取り組んだり、何かを学んだりすることで、小さな成功体験を積み重ねていくことは自己効力感を高めることにもつながります。特に社会で多くの人と関わってきた人が引退後、その機会が減ることでストレスになっている場合があります。引退後も意味のある活動をしたり、新しいコミュニティーに参加したりすることは大切です。

今、医療機関や店、カスタマーセンターなどでカスハラ被害に悩まされている人も少なくないと思います。まずはご自身の気持ちを落ち着けること、そして、目の前で怒鳴っているのは、実は助けてもらいたい人、困っている人だと認識してみてください。そうすると「怒鳴っているけれど、大変なんだな」と俯瞰して落ち着いて対応できるようになり、相手の怒りの感情に振り回されなくなります。

カスハラに効果的な対応「2つのコツ」

その上で有効な対応を2つ紹介します。

1.共感を示す

相手の感情を逆撫でせずに落ち着かせるために、まず「相手の気持ちを受け取ること」が大切です。相手の言ったキーワードや語尾をくり返す、話を要約することで、相手の言い分を理解している、共感していることを示します。頷きながら話を聞くのも効果的です。「すみません」という言葉は安易に使わない方がいい場合もありますが、明らかに落ち度がある場合は丁寧に謝ることが大切です。

(例)
【客】いつまで待たせるんだ。1時間前に予約してるんだぞ。
【スタッフ】1時間前に予約なさっているのですね(1時間、予約というキーワードを使用)。お待たせして申し訳ありません。

または
【スタッフ】1時間もお待たせしているのですね……(相手の言ったことを要約)。申し訳ありません。

2.解決の方法をいくつか示し、相手に選んでもらう

相手のコントロール欲を満たすために、相手が自分で選べるような形で解決法を提案します。感情が優位になっている相手に対して、何がいいのかを冷静に考えるきっかけを与えることができます。

カスハラをする人は「自分が権力を持っている」と勘違いしていることが多いので、境界線を明確にすることも大切です。被害を受ける側が相手の一方的な要求にすべて応える必要はなく、「ここまでは受け入れ可能だが、それ以上の要求には応えられない」と具体的に伝えましょう。その境界線を超えた内容に対しては、穏やかに、そして丁寧に、はっきりとNOと言うことが大切です。組織として、どこまでは要求を受け入れてもよいか、どこからはNOなのかをしっかり決めておくとよいでしょう。

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