官邸がはじき出した1679億円の経済効果

そんな中で、「静岡県のメリット」を考えたのは、官邸である。

岸田文雄首相は2023年1月4日の会見で、「リニアの全線開業に向けて大きな一歩を踏み出す年にしたい」とした上で、未着工の静岡工区に触れて、「地元との調整、国の有識者会議の議論を進めるとともに、東海道新幹線の停車頻度の増加についてシミュレーションの結果を8月頃までに示したい」と国交省に指示したことを明らかにした。

国交省は2023年10月20日、静岡県のメリットとして「リニア開業後の東海道新幹線の停車頻度増加のシミュレーション」を発表した。

報告書の内容は、「リニア開業によって、のぞみの需要が3割程度減ることを想定して、ひかり、こだまの本数が増えて現状の静岡県内の停車数が1.5倍程度に増えること」を予測していた。

これによって、静岡県外からの来訪者増など地域にもたらす経済波及効果を1679億円、生み出す雇用も年約15万6000人と試算した。

他にも企業立地や観光交流などが生まれ、地域の活性化につながるとしている。これが官邸の考えた「静岡県のメリット」だった。

富士山
写真=iStock.com/DoctorEgg
※写真はイメージです

川勝知事は「お粗末」と一蹴

この報告書に対して、川勝知事は10月23日の会見で、「今度の国交省の発表は、内容がお粗末であり、あきれた」などと散々にこきおろした上で、「10カ月も掛けてやられたことに、お粗末であり、あきれている」「1.5倍にすれば、どれだけになるかと算数の計算を、子供にさせるようなことを、大官僚組織がやるほどのことかと改めて思う」など「お粗末」を計4度も繰り返して、国交省鉄道局を徹底的にけなした。

つまり、「静岡県のメリット」としては「お粗末」だと言いたかったのだ。

それでは、川勝知事がJR東海に「誠意を示せ」と求めた「誠意」とはいったい、何だったのか?