安倍を“たらし”込んだ“大物”経産官僚たち

320議席を超える大勝を収めた自民党と公明党だが、今後の評価は、経済政策にかかっている。(Bloomberg/Getty Images=写真)

圧倒的な勝利で政権を奪取した自民党。その圧勝劇の裏で霞が関にも地殻変動が起きている。解散が現実味を帯び始めていた2012年11月16日、自民党の経済財政政策の中枢となる「日本経済再生本部」が政権公約ともいえる経済政策の骨子を発表した。“「縮小均衡の分配政策」から「成長による富の創出」”“あらゆる政策手段を導入して名目3%以上の経済成長を目指す”。こうした目標を掲げた新首相、安倍晋三が唱える“アベノミックス”のコアがここにある。

「ニッポン産業再興プラン:世界で勝ち抜く製造業の復活と付加価値(所得)の高いサービス産業の創出」。こう謳われている政策には、製造業を復活する手立てとして、「産業競争力強化法(仮称)」を制定することによって、「設備投資を促進させ」、政策金融の分野においても法律的な改正を行うことで、「融資から出資への流れ」をつくり出すとされている。

この骨子には、安倍が衆議院解散直後から“絶叫するように”訴えていた日銀法の改正、物価目標2%の設定などが強い調子で記述されているが、目を引くのが「官民協調ファンド」の設立の件だ。

前段で触れた製造業復活プランと連動するプランがある。それは、国際価格競争力で明らかに日本が後れをとっている韓国の外債を購入することを可能にするプランで、韓国国債などを購入し、意図的に韓国ウォンを現在のウォン安からウォン高に誘導するというものだ。

こうした経済政策は、自民党政調会長である茂木敏充とともに、経済産業省の官僚らが、内々に練り上げたものだ。

政権交代が現実味を帯び始めた夏過ぎから財務省、経産省の官僚たちは、頻繁に自民党幹部らと接触し始めていた。安倍政権でそれぞれ秘書官を務めた幹部官僚たちは安倍、そして安倍の側近たちを次々と訪ねるようにもなっていた。