銀座限定の「屋台」…江戸風の空間演出
メニューは、基本的には他の「くら寿司」と同じだ。ただ、異なるのは、店舗限定メニューがあること。「くら小江戸」というメニューでは、テーブル上のタブレットで特上の寿司、天ぷら(赤海老、穴子、真あじ)、団子(みたらし、あんこ、白あん、抹茶あん)などを注文し、江戸時代の風景が再現されたそれぞれの屋台に受け取りに行く。
同社は「グローバル旗艦店」として、「体験」を押し出した回転寿司の楽しみ方を提唱しているが、江戸時代風の屋台の中へ食べ物を自分で取りに行くというのは、まさにそうした「体験」にフォーカスを当てた楽しみ方だといえる。
三つの屋台の前には、いかにも江戸らしい柳の木のレプリカが置かれ、その周りでは職人が実際に寿司を握ったり、天ぷらを揚げたりしている。また、このエリアはライトが暗くなっており、夜の雰囲気が演出されている。壁面には花火を模した店内デザインもあり、徹底的に「江戸」的な空間演出が行われていることがわかる。クローズしてしまったが、「大江戸温泉物語」などに近い空間演出だといえるだろう。
テーマパーク型開発で特別感の空間演出を
くら寿司は、これまでもグローバル旗艦店において、インバウンドに向けた空間演出を積極的に取り入れてきた。ただ、今回の銀座店は、これまでのグローバル旗艦店の演出よりもさらに先に進んでいるといえるかもしれない。
これらは、最近の商業施設のトレンドからいえば、「テーマパーク型開発」ともいえる空間の作り方だといえる。豊洲に誕生した「千客万来」のように、空間全体を、江戸時代のようにしてしまう開発のことである。
こうした空間演出は、ディズニーランドなどに見られるものだが、それが近年では、訪日観光客向けの施設に多く取り入れられ始めている。恐らく、もっとも簡単に、空間における「特別感」を演出できる方法なのであろうが、こうしたトレンドの中で「銀座くら寿司」も空間としての「特別感」を演出しようとしているのだ。
そして、そこに、この店の勝ち筋を見出しているのだといってもよい。果たして、この勝ち筋は、本当の勝利をくら寿司にもたらすのか。くら寿司が、銀座の歴史の中でどのような役を担っていくのか、これからも注視していきたい。