チェーン店も銀座の特別感の影響を受けてきた
このように、いくつかの企業が自社のブランド確立のために銀座に出店を進めてきたのは、我々日本人が長らくこの街に「特別感」を抱いてきたからに他ならない。
実際、2021年にメトロアドエージェンシーが行った調査でも、80%以上の人が銀座を「高級な街」だとイメージしている。どこかいつもとは違う街として「銀座」を意識しているわけだ。そして、その銀座という街が醸成してきた「特別感」こそが、現在、銀座に訪れる訪日観光客が体験したい街の雰囲気になっているともいえる。
NTTコムリサーチの調査によれば、訪日アジア観光客の45%が銀座に対して「高級感のある」イメージを抱いているという。
その点を、これまで銀座に出店してきたチェーンストアも意識をしているようだ。たとえば「ユニクロ」の場合は、銀座にオープンした旗艦店について、他の店舗との違いを意識した構造をしている。中にはギャラリーを併設していたり、カフェもあったりして、他の店舗とは異なる「特別感」を演出している。それゆえに、銀座の「ユニクロ」は訪日観光客にとっても一つの名所のようになっているのだろう。
銀座にチェーン店がやってきて、銀座がダメになった、のではなく、むしろ、銀座の特別感をチェーン店もまとうような作りになっているのだ。
「銀座くら寿司」の特別感は?
では、今回の「銀座くら寿司」にはどのような特別感があるのか。実際に訪れてみた。
「マロニエゲート銀座2」の8階に「銀座くら寿司」はある。店内の外から、既に他のくら寿司と異なるような雰囲気を醸し出している。いわゆる「江戸風」の店構えとでもいおうか。これだけでも、他のくら寿司とは異なっている。
店内に足を踏み入れると、そのコンセプトがはっきりとわかる。壁一面に広重の浮世絵「名所江戸百景」が描かれているのだ。実際、今回の「銀座くら寿司」のコンセプトが「広重の浮世絵」であり、江戸時代の空間を再現している店内のコンセプトを、この浮世絵が端的に表している。
また店内全体は白を基調としたカラーリングになっており、清潔感とともに、モダンな雰囲気も感じさせる。店舗デザインを担当しているのは、デザイナーの佐藤可士和氏で、「食をテーマにしたエンターテインメント施設」を目指しているとコメントしている。
機械での受付をすませ、テーブルに付く。それぞれのテーブルはカーテンのようなもので仕切られ、半個室になっている。日本の「のれん」を意識しているのかもしれないが、普通の回転寿司では、他の客も丸見えになるところが、このカーテンで仕切られていることによって、ゆったりと過ごすことができる。誰の目も気にすることなく、ゆっくりくつろげるだろうから、観光客など、ゆったり時間を過ごしたい人にぴったりだ。