道路の使用許可を取らない「ゲリラ撮影」だった
――路上で撮影をしていますが、どのように許可を取ったのですか。
撮影には被写体でない人も含めて総勢130人ほどに協力してもらいましたが、周囲の迷惑にならないように気を配りました。
かつて渋谷のスクランブル交差点の真ん中にベッドを置いたYouTuberが道路交通法違反の疑いで書類送検され、罰金の略式命令が下りたことがあります。私の撮影でも、道路上に物を置きたかったのですが、そうすると交通を妨害したとして罪に問われる恐れがあります。そのため今回は見送りました。
また、外苑のイチョウ並木には、日中、多くの人やクルマが行き交います。迷惑になってはいけないので、交通量の少ない早朝に撮影を行いました。信号が青から赤に変わるまでは約1分5秒。信号が青になると同時に配置につき、点滅と同時に歩道に撤収するという撮影を何度か繰り返しました。
道路の使用許可を取らない、いわゆる「ゲリラ撮影」だったのですが、交通を妨げることはなかったので法的な問題はなかったと思っています。
干されて消えるなら、それまでの作家だったということ
――今回の撮影について、懸念を示す関係者もいたと聞きました。
そうですね。政治的なメッセージがあるからなのか、いつもなら協力的な人からも、突き放されてしまうことがありました。直接、「ずいぶん政治的なことをするんだね」と言われたこともあります。
こうした発信にはリスクが伴うのだなと、あらためて実感しました。私の作品は個人や企業関係者、美術関係者からも多数購入いただいていますが、そうした取り引きが減ってしまうかもしれません。また、行政や企業などから依頼された仕事に呼んでいただくこともありますが、「イロの付いた写真家は避けたい」と言われるようになるかもしれません。
ですが、そうしたことを怖がって何も表現しないまま人生や表現活動を終えることは考えられませんでした。多少リスクがあっても自分が思うことを表現したい。自分のやりたいことをできずに消えていく作家はごまんといます。「干される」という表現が正しいかどうかはわかりませんが、今回の撮影で消えたならそこまでの作家だったんだな、という思いでシャッターを切りました。