公認会計士として経営者によく聞かれることの1つに、「わが社の問題点を見つけるにはどんな指標を見ればいいか」というものがある。

そこで業種に関係なく覚えてほしい会計指標は何かというと、「1人当たり経常利益」なのだ。これを押さえておけば、他社と比べて劣る点、改善すべき点を知るために“鬼に金棒”といっても過言ではない。

「経常利益」は誰もが知っている基本的な指標だが、公認会計士や税理士であっても、経常利益の“真の重要性”を認識している人は意外に少ない。表面的な意味を知っているだけなのと、キャッシュを生むために徹底的に使いこなせるのとでは、天と地の差が出てくる。

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1人当たり経常利益の求め方

まずは経常利益について復習しておこう。経常利益とは、本業で稼いだ営業利益と本業以外の資金運用などで稼いだ営業外収益から、支払い利息、為替差損などの営業外費用を引いたものである。

経常利益の額を把握することも大事だが、これだけでは物足りない。本気で業績アップのために財務分析をするには、1人当たり経常利益が重要なのだ。

1人当たり経常利益は、「経常利益÷従業員数」という計算式で求められる。この従業員数には、契約社員やパートといった臨時雇用者も含めることがポイントである。ただし、臨時雇用者にかかる人件費は正社員と異なる。正社員が「1」なら、臨時雇用者は「0.5」前後でカウントするなどの調整を行う。その比率は給与や就業時間をベースに考えるといいだろう。臨時雇用者の人数が時期によって異なる場合は、期中平均の人数で計算したらよい。

つまり1人当たり経常利益は、「営業活動や財務活動から、1人当たりいくらの利益を残したか」ということを示すものなのだ。この数字が悪い経営者は、相当の覚悟をもって改善にあたる必要がある。私の感覚では、リーマンショック前なら上場企業の合格ラインは200万円程度だったが、景気の低迷もあり、現在は100万円というのが目安だろう。