中小企業なら健全経営の合格の目安は1人当たり経常利益50万円である。30万円を切るとイエローカード、それが2年続いたらレッドカードを切られ、経営者は退場すべきかどうかを考えてもおかしくない。

30万円では、ちょっとした不景気ですぐ赤字に転落し、資金繰りも苦しく、会社の財務は非常に不安定な状態と考えられるからだ。残念ながら、中小企業で合格ラインをクリアしているのは2割以下だと思う。

こうした1人当たり経常利益は経営者の成績表ともいえるもので、合格点以下なら経営者は自分のマネジメント、マーケティングが悪いと心得よう。節税や事業継承を考えるのは合格ラインを超えてからの話。それ以下ならマネジメントやマーケティングを早急に見直すべきだ。

一方、従業員の立場から見るとどうだろうか。

経常利益は社員の人件費を除いた正味の利益。つまり1人当たり経常利益は、社員が会社にもたらした正味の利益と位置付けられる。上場企業で合格ラインである200万円もの利益が毎年あがっているとなれば、従業員は「少しは給料を上げてくれ」と思うかもしれない。

しかし、これは大いなる誤解である。多くの場合、すべて自分の力で稼いでいるわけではなく、会社のネームバリューやシステムなどがあってこその稼ぎであるからだ。

とはいえ、1人当たり経常利益はあくまで社員1人当たりの平均の稼ぎ力であり、平均より低い人もいれば、大幅に上回っている人もいる。となれば、稼ぎ力の差を給料に反映させ、さらに稼いでもらうようにすることも、経営者にとって重要なマネジメントであろう。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)
【関連記事】
マクドとモスに見る利益率・収益力とは
4つの利益 -違った視点で会社の実力を読み取るバロメーター
なぜ高収益チェーンの上限店舗数は「100」なのか
デフレの正体は肥大する内部留保にあり
会計新書式「XBRL」とは -財務諸表に国際標準仕様のデータを義務付け