景品表示法違法とされたソーシャルゲームの課金システム「コンプリートガチャ」。逆風下に立たされたオンラインゲーム会社では、開発費の会計方針に変更の動きが出ているようだ。
一般に開発費とは、新しい技術や新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓などのために支出した費用といえる。ゲーム会社においてはゲーム機用ソフトを企画、制作するための費用などがこれに当たるだろう。
多くの場合は開発したソフトを販売し、売り上げを計上する際に一括して経費化しているが、一部のゲーム会社が開発費の処理方法を変更するというのである。対象とするのはインターネットに接続するアイテム課金型のゲームで、売り上げがあがるのが長期間にわたるため、開発費もそれに対応させる形で償却するのが狙いと報道されている。
オンラインゲームの中にはゲームそのもののダウンロードは無料で、ゲームを楽しむためのアイテムに課金するものがある。店頭でソフトを販売するタイプのゲームでは発売直後に大量に売れ、その後、売り上げが急減するが、ダウンロード無料のゲームではソフトの販売で一時的に大きな売り上げを得るのではなく、数年にわたって関連の売り上げを得るという違いがある。そのため、費用を分割して計上したほうが実態に合うのだ。
店頭販売するソフトやダウンロードが有料のソフトについては、従来どおり、開発費を一括計上する方針だという。
そもそも開発費とは繰延資産の一つである。繰延資産は、すでに支出された費用であっても、その効果が将来に及ぶものと定義づけられており、会社の創立費、開業費、社債発行費、株式交付費などがこれに該当する。開発費もそこに含まれ、費用全額を当期の費用とせず、次期以降にも配分して処理することが認められている。その開発費には開発に携わる人の人件費、光熱費、材料費、諸経費など、一般の感覚では必要経費に思われるものも含めることができる。
一括で費用処理する場合、開発中は「仕掛品」や「ソフトウエア仮勘定」などの資産として計上し、発売と同時に費用とする。対して長期にわたって費用処理する場合には、開発中は「仕掛品」その他の資産で計上し、開発完了時点で「ソフトウエア」に振り替えて、一定額を償却する会計処理を行うことが考えられる。
たとえば開発費が1000万円かかり、それを5年で処理する場合、初年度の償却費は200万円となり、未償却の開発費800万円は繰延資産として残す。この800万円の開発費に換金価値はないが、次年度以降も売り上げを生む資産と位置付けられているわけなのである。
ソフトそのものを商品本体、アイテムをオプションととらえれば、無料オンラインゲームはオプションで稼ぐ収益モデルであり、家電やクルマとは大きく異なる。収益モデルが違えば会計処理の仕方も変わる、と理解してもいいだろう。
とはいえ、1つ注意しなくてはいけないのは、会計処理の仕方によっては利益を過大に見せる効果がある、ということである。開発費を一括計上すればその年度は費用が多くなり、利益が圧縮されるし、逆に費用を分割して処理すれば、費用が減って利益が大きくなる。
景気がいいとき(収益が多いとき)には一括処理し、景気が悪いとき(利益が少ないとき)には分割処理するなど、利益操作に使われる危険性がないとは言い切れないのである。
もちろん、会計監査においては、処理の妥当性がチェックされるはずだが、個人投資家のみならず、M&Aを検討する場面などでも、会計処理によって利益操作がされていないかを確認するという視点を持つことも重要である。