パワハラと言われたら感情と事実を分けよう

実際に部下からパワハラを指摘されたときに最も大切なのは、「感情」と「事実」を分けることです。パワハラを受けたと考えている部下は、心の底で大きな憤りを抱いているはず。「何を言っているんだ」と上司が感情をむき出しにして反論したら、部下の憤りがヒートアップするだけです。まず上司は「あなたの言い分はわかった」と冷静に受け止め、部下の感情がそれ以上悪いほうへ向かわないようにします。

そのうえで上司は、「どうしてパワハラと思ったのか」を部下に尋ね、原因となった事実を抽出します。その事実を検証して、実際にパワハラに当たるのであれば、その非を認めて謝罪することが大切です。上司が潔い姿勢を取ることによって、その場のマイナスのムードは払拭されるでしょう。

納得がいかない場合は理由を含めてはっきり伝える

しかし、業務を遂行するにあたって必要な指示や注意を与えたのにもかかわらず、パワハラと受け止めてしまう部下が少なからずいます。その場合、「私はパワハラとは思わない」と、上司は理由を含めてはっきり伝えます。万が一納得がいかないのなら、部下から人事部やコンプライアンス担当に相談してもらっていいことを話します。指示や注意を与えるのは上司の重要な役目であり、毅然きぜんとした態度で臨みます。

この際の話し方として、「あなたはパワハラと言うが」というように、「あなた」を主語にすると、部下を責めるニュアンスのメッセージになってしまい、部下が耳をふさいでしまう可能性が高まります。逆に「私」を主語にすることで、上司は自分の意見を明確にでき、部下も冷静に耳を傾けるようになってくれるものなのです。

【図表】シーン4 気遣う