夏場にタンパク質不足で発症するケースも

どうしてうつ病になってしまうのでしょうか。大きく心因と身体因のふたつあります。

心因は、定年退職や子どもの独立、引っ越しといった環境の変化やパートナーの死、ペットの死、コロナ禍で習い事に行けないなど、心のり所を失ったとき。

身体因は、食事が偏って「かくれ栄養失調」になっていたり、外出しないために幸せホルモンのセロトニンが不足した場合など、身体からきます。

夏場などあっさりした麺類ばかり食べていると、タンパク質不足でうつ病を発症するケースがあるのです。

高齢者の場合のうつ症状は、気分の落ち込みより、まずは身体化症状として現れるケースがよく見られます。

「身体がだるい」「食欲がない」「腰が痛い」「便が出ない」。

このような症状が身体化症状として見られるうつ病です。

「タンパク質ってそんなに大事なの?」「野菜を食べるほうが健康にいいんじゃないの?」「外出しないだけでセロトニンという幸せホルモンが減ってしまうの?」と驚かれたのではないでしょうか。

和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)
和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)

こんなときは陽の光をたくさん浴びましょう。朝、カーテンを開けて、太陽の光を浴びる。コンビニまでちょっと歩いて行く。こんなふうに意識して、陽の光を浴びるようにしてみてください。

食事をつくるのが面倒であれば、コンビニに行けばレンチンするだけですぐに食べられる栄養たっぷり、タンパク質豊富な食べ物がたくさん売られています。

「鶏肉と卵のサンドイッチ」「サラダチキン」「唐揚げ」「鮭の塩焼き」「鯖のみそ煮」などなど。この文字を読んだだけで、だんだん食欲がわいてきませんか?

視覚情報として目に入ってくると、それによって脳が刺激され、食欲がわいてくるものです。ぜひ外に出かけましょう。

認知症とうつ病を見分ける“たった1つ”の方法

じつは高齢者のうつは、うつ病特有のうつ気分があまり目立ちにくいのが特徴です。不眠や食欲低下は、高齢者専門の精神科医の私からすれば、典型的なうつ症状だとわかるのですが、高齢者のことをあまり知らない医者だと、「年のせい」で片づけられてしまいがちです。

物忘れが多くなって、着替えもせずに、外にも出かけないと聞いたら、間違いなく認知症だろう、と多くの人は思います。しかし、うつでも同じような症状が起こるのです。せっかくですから、うつ病と認知症の簡単な見分け方をお伝えします。

認知症の場合は、年単位で病状がゆっくり進行する。

うつ病の場合は、1カ月単位で急変することがある。

お正月に会ったときは元気だったのに、夏ごろから物忘れが激しくなった。このような場合、私は認知症よりうつの可能性が高いと思います。

重症化する前に早めに受診すれば、元気にご飯が食べられるようになりますよ。

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