したがって、ステップ①で一番大切なのは、無理なく継続すること。私がいつも実践しているのは「深く考えすぎずに、ネイティブが発するフレーズをたくさん聴いて、ひたすら真似する」という方法です。

いきなり「ネイティブの発音を真似する」と聞いて、ちょっとるんでしまった人もいるかもしれません。聴き取る力に自信がない人ほど心理的なハードルを感じてしまうと思いますが、安心してください。

自分が正確に発音できる音は、正確に聴き取れるものです。つまり、「耳を鍛えること」と「正しく発音できるよう訓練すること」はセットです。

私はネイティブと話しているときに、よく「すごく発音がいいね!」と言っていただけることがあるのですが、最初から耳がよかったわけではありません。

「ネイティブの発音を聴いては再現しようと試みる」というのを繰り返すうちにだんだんと聴き取れるようになり、その音を出すときの唇・舌の形や位置、喉の使い方などのイメージと共に、ほぼ正確に再現する力もついてきました。

聴き取る力や、聴いた音を再現する力は生まれつきのものではなく、徐々にコツをつかみ、鍛えることができるというのが私の経験上の実感です。

外国人とコミュニケーションをとっているビジネスパーソン
写真=iStock.com/TakakoWatanabe
※写真はイメージです

うまく発音できればリスニングも向上する

まず自分なりに「こう発音するとネイティブの発音に近くなるかな」という感じで、気軽に続けてみてください。先ほども述べたように、自分が発音できる音は、きちんと聴き取ることができます。

つまり、まず注意深く聴いて、うまく発音できるようになってくると、リスニングも向上します。そしてリスニングが向上すれば、さらにきちんとネイティブの発音を聴き取れることで、いっそう発音が向上するという好循環が起こるのです。

そんな好循環を起こしていくためにも、ここで使うのは、「実用的なフレーズをたくさん、ネイティブの発音で聴けるデジタルツール」がいいでしょう。

ご自身で使い勝手のいいものを探していただいてもいいのですが、私のおすすめは本書(第2章)で紹介したPimsleurです。

Pimsleurは、ポール・ピンズラーというアメリカの応用言語学者が確立した「ピンズラー・メソッド」を踏襲したアプリです。平易なフレーズを何度も繰り返しながら、少しずつフレーズのストックを増やしていきます。

学術的な根拠があるという点でも信頼できますし、何より、私自身が実際に使ってきて最も効果を感じているツールであるというのが、おすすめしたい一番の理由です。

発音は「言語学習の永遠のテーマ」

さて、フレーズを真似する際、自分の発音が正確かどうかを知る必要がありますよね。Pimsleurでは発音をチェックしてくれる簡易的な機能があるものの、精度はわかりません。

言語教育系のYouTubeチャンネルなどで学習する場合も、同様の壁に直面します。発音チェックに協力してくれるネイティブが周りにいればベストなのですが、独学では、それもなかなか難しいでしょう。