77.5%はフェイクニュースを嘘だと気づかなかった

我々現代人は日常的に、大量の「正しさ(Correctness)」を僭称するプロパガンダと「免罪符」を「『正しさ』の商人」たちから押し売りされている。

その一方で、本書に記した様々な事例でも明確に示されてしまったように、おそらく我々は自分達が期待しているほど常に理性的であるとは言い難い。いかなる人であろうと、しばしば「間違える」ことがある。

経済学者の山口真一国際大学グローバル研究センター准教授の研究では、《フェイクニュースを見聞きした人の77.5%(4人に3人以上)はそれを嘘だと気づいていなかった。しかもそれは年齢に関係なく、若い人も年齢の高い人も騙されていた。》ことが示されている。

テーブルの上で携帯電話を握り、入力するビジネスマン
写真=iStock.com/sengchoy
若い人も年齢の高い人も騙されていた(※写真はイメージです)

また、マイアミ大学のジョゼフ・E・ユージンスキ教授も著書『陰謀論入門 誰が、なぜ信じるのか?』(北村京子・訳 作品社・2022年)の中で、「陰謀論を信じるのは極端な人や精神的に病んでいる人」「リベラルよりも保守派の方が陰謀論を信じやすい」などの、特に誤解が多い俗説を明確に否定している。

人には感情があれば、バイアスや利害関係もある。年齢や環境、経験によって価値観も大きく変わる。人生の中で「正しさ」を見誤ることは誰にでもあり、決して特別なことではない。

それは特定の党派性や地位、年齢などに依るものではない。むしろ人並み以上の知識や地位があり、「自分が正しいと自信がある」人ほど間違えやすい傾向さえある。

これは、書籍『FACTFULNESS』が投げかけた質問の正答率とも一致する。

「エコーチェンバーの中にいるのではないか」と自問すべき

だからこそ、我々は次々と現れる「正しさ(Correctness)」を自称する物事の正体を、注意深く意識・観察しなければならない。

それらは客観的事実なのか。出どころはどこで、誰がどこまで責任を担保しているのか。その「正しさ」の陰で起きる代償と弊害は何か。自分はいつ、どこからの情報によって、それを「正しい」と確信するに至ったのか。

社会には、「これが自分だ」「正義だ」と疑いなく信じていたはずのアイデンティティや志向、価値観、あるいは「怒り」「憎しみ」「敵意」「敵味方」といった他者への評価や感情までもが、実は閉鎖的なエコーチェンバー内での共感や同調圧力、期待に応える振る舞いを重ねるうちに他者から植え付けられた「借り物」であり、虚構であったりすることがありふれている。

「自分はエコーチェンバーの中にいるのではないか」を、常に自問するべきだ。