失敗体験を生かせるリーダーか?
ジェニーン氏は、「アメリカの経営者の最大かつ基本的な間違いのひとつは、いつの間にか冒険を避けるようになってしまったことだ。自分のやることに確信を持ち、けっして職業的な過ちを犯さないのがプロフェッショナルマネジャーだという誤った考えが、リスクを冒すことへの情熱を失わせてしまった」と言っています。
「失敗することをしない」というのは、どういうことか?
それは、会社も社員も誰もが、新規の仕事に挑戦しないということです。当然、会社は先細りになっていくだけです。
僕自身、「一勝九敗」、成功したのはユニクロくらい、というくらい失敗を重ねてきました。しかし、その失敗を、言い訳せずに真正面からとらえ、なぜ失敗したかを考察することによって、多くのことを学びました。特に「商売は上手くいかないものだ」という大前提も、数々の失敗が教えてくれたことです。
僕から言わせていただけば、仕事や事業は上手くいって当たり前、成功して当然と思っている人が多すぎます。でも、現実は違う。「商売は上手くいかないもの」だし、当然失敗する。しかし、失敗というのは大変貴重な経験で、いろいろなことを学び取るチャンスなのです。
失敗した後、よくよく考えれば、たいていなぜ失敗したのか、その原因がわかります。すると同じ失敗はしなくなるし、経営計画も、数々のリスクを想定した、より綿密なものになっていきます。
ジェニーン氏は、「良い経営計画とは、将来起こりそうな問題の予見と、それらの問題を回避するためにとるべき手段、そして、問題を事前に回避することができなかった場合には、それらを処理する方策が包含されたものなのだ」と定義していますが、痛い思いを経験せずには将来の問題の予見やその回避の方法などを考え出すのは不可能に近いのではないでしょうか。
「唯一本当の間違いは“間違いを犯すこと”を恐れることである」というジェニーン氏のつぶやきは、事業家の真実です。失敗の経験こそが、より周到な確固たる計画を生むキーとなるからなのです。
※すべて雑誌掲載当時
1949年、山口県宇部市生まれ。早稲田大学卒業後、ジャスコを経て実家の小郡商事に入社。91年社名をファーストリテイリングに変更。2002年代表取締役会長就任。05年より会長兼社長となる。