部下の成果を正当に評価する経営者か?

「最も優れた人材を求め、彼らが普通以上に、それこそ時には自分の能力の限界だと考えている線を越えるほどの奮励することを期待するなら、彼らの報酬もそれに比例しなくてはならない。それがきちんと組織された企業のバランス感覚というものだ」――これは、ジェニーン氏の報酬に関する哲学です。

僕も、ファーストリテイリングの売上高が1000億円を超えたときに、店長の仕事を全うすれば、本部にいるよりも高収入を得られる「スーパースター店長制度」を導入しました。商売という場面では店舗が主役であり、本部はサポート役であるべきと考えたからです。それまで店長という職は、本部スタッフに昇格するための登竜門的な部分がありましたが、店長でいることが最終目標でありうるように、理論上3000万円を超える年収も可能になるよう、成果主義の報酬体系に組織改革したのです。

ジェニーン氏は「最悪なこととは報酬を十分に払っていないために部下を失うことだ」と言っています。確かに人間はお金のためにのみ働くわけではありませんが、正当に評価され、認められることが、働くことへのやりがいにつながることは事実です。だからこそ僕は、正当な人事評価なしに、真の経営はありえないと思っています。

もうひとつ付け加えるなら、「経営者は自らの限界を知るべきだ」と考えています。確率で言えば、経営者が一番優秀である確率のほうが低いから、優秀な人とチームを組んで、自分の欠点をカバーしてもらったほうが、はるかにいい経営ができる。人材を自分の手足として使うワンマン経営は、上手くいっているときは最大の効果を発揮することも事実ですが、ある時期になると周りがイエスマンだらけになり、必ず経営はマンネリ化してしまいます。ですから社員の中から優秀なチームを組めるということが、強い経営には必要不可欠となってくるのです。