「松阪牛は雌牛のみ」の理由

松阪牛の定義には、「雌牛めうしのみ」という条件があります。全国のブランド牛の中でも雌牛のみというのは非常に珍しいことです。

これから雌牛について説明をしていきますが、これを読めば、なぜ松阪牛が日本一と呼ばれているかがわかるはずです。

私は、世の中には美味しくない牛肉は存在しないものだと思っています。その中でも美味しさを追求していくと、いくつかの重要な要素が存在します。

その1つが性別であり、雄牛おうしではなく雌牛が高く評価されていることです。

去勢していない雄牛には臭みがある

雄牛と雌牛は見た目からも、その違いが見て取れます。

牛も人間と同じように、雄牛は体が大きく、がっちりとした筋肉質な体形で、肩回りの迫力は雌牛とは比べものになりません。触った感触も、雌牛の方が圧倒的に柔らかさを感じられます。

以上の特徴から、雄牛は子牛の時期に去勢することで、雌牛に近い柔らかさを得ることができます。しかし、去勢したとしても、雌牛に比べて体格はかなり大きいので、肉繊維の繊細さなどは雌牛との違いが生まれてしまいます。

また、去勢していない雄牛を食べると、本来の雄牛には臭みがあると言われています。

そこで去勢することで、肉の臭みも感じられなくなったり、性格が大人しくなり、他の牛とケンカしにくくなるというメリットもあります。

雄牛と雌牛
写真=iStock.com/49pauly
本来の雄牛には臭みがある(※写真はイメージです)