既存勢力に反発する女性議員は圧力をかけられる

そうした状況についてSNSで発信すると、さらに責められ、圧力をかけられる。「萎縮させるのが目的だ」と土屋氏は考えている。そうしたハラスメントの大半はほとんど表に出ず、ブラックボックスに入ったままで、外からはわかりにくい。

だが土屋氏の経験は特別ではなく、他の議会でも少なからず起きている。特に女性議員は、バッシングの対象になりやすい。新人の女性議員がそうやって圧力をかけられていくうちに疲れて、次の選挙に出ることを止めてしまう、といったことも稀ではない。「政治家=権威がある」「女性=受動的」といった固定観念から外れたものとして女性の政治家は捉えられ、嫌悪感や恐怖感を抱かれることがある、と土屋氏は感じている。

政治分野のジェンダー平等が世界でも最低水準の日本で、女性議員増は喫緊の課題。だが、単に当選したと喜んで終わるのではなく、彼女たちが議員として働きやすい環境に変わっていかなければ意味がなく、女性議員がいつまでたっても育っていかない状態が続く。

湯河原町議会議員選挙にて
写真=筆者提供
湯河原町議会議員選挙にて

議員当選、懲罰、辞職勧告、町長選で敗退という浮き沈み

町議になってからの4年間、土屋氏はまるでジェットコースターに乗っているかのように、浮き沈みを繰り返してきた。隣の真鶴町長選を応援していた2021年、選挙人名簿を手書きで筆写すべきところを撮影して問題になり、辞職勧告された。「一人で戦っていては、らちがあかない」と2023年4月、町長選にも挑戦した。だが得票は約4600票にとどまり、約6200票を取って5選を果たした冨田幸宏氏に敗れた。

訴訟も負けた。滞納者リスト問題で懲罰を受けたのは名誉毀損めいよきそんだと2021年1月、町側を提訴。地裁では勝訴したが、高裁での控訴審で逆転敗訴。最高裁への上告は今年3月、不受理に終わった。「秘密会に対する判断を避けて、議会報の掲載問題に矮小わいしょう化した結果だ」と土屋氏の弁護も務めた大川弁護士。議会内の少数派いじめに懲罰制度が乱用されることが全国的に増える中、最高裁が2020年、60年ぶりの判例変更に踏み込む事態に発展している。「そのこと自体に異を唱えた判決ではない。その足元に達する前の段階で、小さな問題として処理してしまった」と大川氏は話す。