観光客誘致のため芸妓を呼ぶなど、税金の使い方がズレている

日本の地方自治は、二元代表制となっている。首長と議員の両方を、住民が直接選挙で選ぶ形だ。行政の運営が適切に行われているか、審議や議決を通じて議会でチェックするとともに、議員が政策提言を行うための制度だ。

土屋氏自身は、議会や委員会の場で、おかしいと思ったことはどんどん指摘してきた。当選直後はちょうどコロナが深刻化し始めた時期。緊急事態宣言が出て、三密を避けようという呼びかけが行われていた。にもかかわらず、そのさなかに町は、観光客誘致キャンペーンとして芸妓を宴席に呼べるお座敷券を予算に計上した。

また、当初のマスク不足が解消してマスクがだぶつき、アベノマスクが批判を受けていたころになって、町民一人当たり5枚の使い捨てマスクの配布も計画。どちらの予算案も「ずれている」と思って反対したが、多数決で可決された。

他にも、道の駅の整備調査費を計上したが、最初からわかっていた課題に対処できずに、あんのじょう頓挫とんざしたり、小さい町で通勤距離も短いのに、運転手つきの高級車を借り、町長車と議長車として多額の予算をつけたりと、税金の使い方として首を傾げることが多々あったという。

600万円かけて謎の「みかんモニュメント」を作ろうとした

中でも驚いたのが、インスタ映えを狙うと言って、みかん箱を乱雑に積み重ねた上に特大のみかんが乗るというモニュメントを湯河原駅前に設置しようと、町側が計画していたことだ。それも、最初は600万円という費用だけが予算案の中に計上されていた。中身について議会で質問しても、町側はデザインも設置場所も、具体的に答えられなかった。「民間だったら、こんなプレゼンテーションに予算をおろすことは考えられない」と土屋氏。その後町側が出してきたのが、そのみかんオブジェだったというわけだ。SNSで炎上しかねない、と結局プランターのようなものに変わった。

新鮮なみかん
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土屋氏の話を聞くと、私たちの税金がどう使われているか、地方行政と地方議会がどのように運営されているか、内幕が浮かび上がってくる。

だが、忖度そんたくせずに意見を述べる土屋氏は、「新人のくせに」と議会と町の双方からたたかれてきた。一般質問をするとやじられ、あいさつすると無視され、議会運営委員会で「あの発言は問題」と他議員から集中砲火を浴びたという。議案にある内容を確認しようとしても、町職員が答えなかったり、冒頭で触れた、町職員の時間外手当の未払い問題について発言すると、「地方公務員法の秘密に抵触する可能性がある」と、ありえないことを町から言われた、と土屋氏は話す。