感情能力向上の研修で4割の受講者に効果
第一生命の柴田知栄さんは「お客さまの表情を見た瞬間、どんな思いをされているのか7~8割方わかります。もし、あまり乗り気ではないなとわかったら、どこかで一度は笑いをとってさっと切り上げるようにしています。そうしておくと、後で『ああ、あのときの第一生命の柴田さんね』と思い出してもらえ、会社に対する印象もよくなるからです」という。
この表情から感情を読むことに長けている点は、どうも“カリスマ”と呼ばれる人たちに共通しているようで、ウエディングプランナーの有賀明美さんも「さりげない会話のなかで、新郎新婦の表情がパッと明るくなったりすると、それがご本人にとって心地よいことだとわかります。そんな心のアンテナを張りながら結婚式をつくっています」という。プランナーの研修には、表情やしぐさから相手の気持ちを読み取る「洞察」と呼ばれるプログラムも導入されているそうだ。
その一方で、営業担当の新人MR(医薬情報担当者)の気の利かなさに頭を痛めているのがある大手製薬会社。人事担当者は「忙しいドクターにせっかく時間を割いてもらったというのに、一方的に自分の話を押し付けて煙たがられたり、なかには出入り禁止となる者まで現れる始末なのです」と嘆く。
そこで同社が白羽の矢を立てたのが、EIリサーチの「感情能力(Emotional Intelligence)」に基づく研修プログラムである。ちなみに先のEQはこのEIを指数化したもの。EI理論を提唱したピーター・サロベイとジョン・メイヤーの両博士は感情能力を4つの能力に分けている。EIリサーチではそれらが1つの流れとして発揮されることで気配り行動につながるものと捉える(図2参照)。
「基本的に気配りは相手が望むことを察知し、それをしてあげること。そこで、まず相手の感情を正確に知覚する読み取り力を発揮させます。次に、なぜそのような感情を抱いたのかを理解する。そして、その場における最善の行動を選択します。ですが、実際に行う本人にとって、それは本来面倒なことなのかもしれません。だとしたら、そんな気持ちを切り替える能力を働かせるわけです」