テイクアンドギヴ・ニーズ ウエディングデザイン パートナーズ代表 
有賀明美 

フェリス女学院大学卒業。1999年にテイクアンドギヴ・ニーズに入社。数多くの芸能人、アーティスト、プロスポーツ選手から指名を受けるウエディングプランナー。

そのことを見事に体現しているのが、テイクアンドギヴ・ニーズのウエディングデザインパートナーズ代表で石田純一・東尾理子夫妻をはじめ著名人の挙式を数多く担当している“カリスマウエディングプランナー”として有名な有賀明美さんである。

結婚式はカップルにとって一生に一度の晴れの舞台。さらに同社では親族、友人など出席した人たちとの人生の絆を結び直す日としても捉えている。もちろん失敗は許されない。それだけに、初めてカップルが式場を訪れた際のご案内から、挙式当日の仕切りまでのすべてを任されるウエディングプランナーの気遣いたるや並大抵ではない。ところが、有賀さんは「社会人になるまで気配りのできない人間でした」と意外なことを口にする。

「そんな私が変わる契機となったのが、入社1年目にサポートしたお菓子屋さんのお嬢さまの結婚式です。ウエディングケーキはお父さまの手作り。でも、奥さまと『夢だった娘のウエディングケーキを作れた。経営も厳しくなったことだし、これを最後に店を閉めよう』と立ち話をされているのを聞き、ケーキ入刀の際に『お父さまからお嬢さまに何かお伝えすることはありませんか』というよう司会者に咄嗟に指示してしまいました」

事前の打ち合わせにはないサプライズ。お店が閉まってしまうことを知った新婦は感謝の言葉を涙声で伝え、父親と抱き合った。その姿を見て列席者全員が目に涙を浮かべながら拍手を送った。

しかし、ふと我に返った有賀さんは「余計なことをしたのでは」という不安に襲われた。式が終わり叱責を覚悟していた有賀さんのところへ新婦の父親が歩み寄ってきた。そして手を取り、「有賀さん、ありがとう」といった。不安が喜びに変わって目から涙が溢れた瞬間、気配りとは何か、その一端を有賀さんは悟った。

「一歩踏み出す勇気が生まれるかどうかは、結局のところ相手のことをどれだけ思っているかにかかっています。帰宅して蒲団に入ってからも、休日のときも、気がつくと『このカップルの望みは何だろう』『どんなことをして差し上げたらよいのだろう』と考えている自分がいます。よく友人からは『疲れないの』と心配されています」

結婚式は効率よくやろうと思えば、パッケージ化していくらでもできるのだという。そうした誘惑を一切断ち切り、どこまで新郎新婦の思いに近づけるのか。その葛藤のなかで、新郎新婦が驚く仕掛けを行う勇気が養われていく。だから、式の途中でも「これは」と思うことがあれば、すぐアクションに移す。

「共感力は非ロジック・非理性の世界。だから瞬間芸になるのです。それに共感力に基づいた気遣いならば、やって失敗することよりも、やらないで失敗することのほうが多い。いらぬ気遣いなどないと考えたほうがいいでしょう」と伊東さんはアドバイスする。

※すべて雑誌掲載当時

(若杉憲司=撮影)
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