猛暑日の地域分布:世界では大陸国で多く、海洋国で少ない

今年、サクラの開花が遅れたからといって、地球温暖化の影響が弱まったとは言えないことは以上で述べたように明らかであろう。今後、われわれは暑さを逃れる対策がこれまで以上に必要とされることとなるのである。

そこで、以下では世界と日本の猛暑日の分布マップを作成し、少しでも涼しい地域へと逃れるための参考としたい。

まず、世界分布を見てみよう。OECDの報告書に掲載されているデータから、猛暑日(最高気温35℃以上の日)を経験した各国の人口の割合をマップ化した。データの得られない国も多いが大勢を理解することは可能である。

結論から言うと、北国と南国という立地よりも、大陸国か海洋国かの違いで人口の猛暑に多くさらされるかどうかが決まって来ることが分かる。陸地より海洋のほうが一日の気温差が小さい。このため海に近い地域ほど一日の気温変動が小さくなり、昼の猛暑にも襲われにくくなっているのである。

具体例を見て行こう。

インド、中国、米国、ブラジル、オーストラリアといった大陸国では人口の60%以上が猛暑日を経験している。

猛暑日経験人口割合世界マップ(2017~21年平均)
筆者作成

東アジアでは、猛暑日経験人口割合が、「大陸国」の中国では78%、「半島国」の韓国では60%、「島国」の日本では53%とほぼ同じ緯度帯であるにもかかわらず、かなりの違いが生じている。

インドネシアは熱帯に位置するにもかかわらず同値が25%に過ぎない。これはインドネシアが海に囲まれている島しょ国だからだと考えることができる。インドの値が95%と高いのは熱帯に位置しているからというより、むしろ大陸国だからと理解したほうがよさそうである。

オセアニアのオーストラリアとニュージーランドは、それぞれ76%、0%と対照的である。これも緯度の違いというより大陸国か島国かという違いにもとづくと言わざるを得ない。

米国よりメキシコ、メキシコよりコスタリカのほうが猛暑日経験人口割合が少ないのも同じ理屈であろう。

ヨーロッパでは英国が7%、スペインが64%と大きな違いがあるのも緯度の違いより海洋性の違いが影響していると見られよう。