「見積額はA社のほうが安いです」だけでは決められない
このやり方が活きるのは、緊急時だけではありません。新しい企画を通すとき、設備投資をするとき、仕事を受注するときなど、ビジネスのさまざまな場面で必要とされます。
「A社の見積は30万円、B社の見積は33万円でした。A社のほうが安いので、A社に発注してもいいでしょうか?」
こんな風に判断を求められても、「見積額」だけでは決められないことがありますよね。納期に違いはないのか? 支払い条件は? アフターサービスは? など、判断に必要な情報は1つとは限りません。よりよい判断をするためには、より「精度の高い事実」を集め、それらを整理することが大切です。
「A社とB社を比較しました。金額、納期、支払い条件、アフターサービスなどの項目について表にまとめました。総合的に評価するとB社がいいと考えられますが、いかがでしょうか?」
このように判断を求められたら、上司は判断しやすくなります。上司と言えども、何でもできて、何でも知っているスーパーマンではありません。上司がよりよい判断を下せるように、よりよい材料を集めましょう。
照明の明るさを数字で示して節電活動を進めた
ビジネスに「数字」はつきものです。具体的な数字と根拠を示すと、説得力は格段に上がります。 逆に、数字も根拠もないと、説得力が乏しいので、人はなかなか動いてくれません。
私は職場の節電活動を進める仕事をしていましたが、こんな伝え方をしていたときには、活動はあまりうまく進みませんでした。
「この部屋は明るすぎます。節電のために、もう少し暗くしましょう」
話を聞く側にとっては、「明るすぎる」と言われても、今までそれが普通だったのですから、ピンとこないでしょう。また、「もう少し暗く」と言われても、具体的に何をしたらいいのかわかりませんよね。
そのことに気がついて、私は次のように、数字と根拠を示して説明してみました。
「この部屋の明るさを示す照度は600ルクスでした。法律によると、事務所で必要な照度は300ルクス以上と定められています。つまり、今の半分の明るさまで省エネすることができます」
こうすると、「明るすぎる」という根拠が明確になりますし、「職場の電灯の半分は、消しておいても大丈夫だ」ということがわかります。すると、「じゃあ、この列の電灯は1つおきに消すことにします」というように、職場の人たちが自分から動いてくれるようになりました。
さらには、「節電によって、月○○円の電気代を減らすことができます」と、金額も数字で具体的に示すと、節電に対するモチベーションはさらに高まりました。
このように、数字と根拠を示すと、説得力のある説明ができるだけでなく、相手も納得して動くことができるようになります。