総合選抜と相性がいい「地域みらい留学」

【岩本】鈴木元太くんの場合もそうでしたけど、地域みらい留学を経験した子は、総合型選抜、推薦やAO入試に強いんですよ。

地域で社会課題と向き合って、問題意識を持つ。それを本当に解決しようと思ったら、もっとこんなことを学ぶ必要がある。そのためには大学に行ってこういうことを学ぼう――そういう動機づけがはっきりしている子が多いから、総合型選抜と相性がいいんです。

――地域みらい留学をしたことが、大学進学の武器、自己PRの材料になるわけですね。

【岩本】他の受験生で越境して地域活動をやっている子はなかなかいないですからね。大学の面接官も興味を持つでしょう。生徒の側も、「こういう理由で行って、こんなプロジェクトをやって、こんなことを学びました」と話すことがたくさんある。

しかも、自分の経験をもとに、自分の言葉で、自分の思いを自分らしく語ることができる。だから、彼らの話には説得力があるんですよ。どこかから持ってきた抽象論ではなくて、地に足がついていますからね。その点で大学側からの評価はすごく高いです。

ただ、最初から東大・京大、あるいは医学部に行くというのがゴールだったら、地域みらい留学でなく、いわゆる進学校に行くほうが確率は高いかもしれませんね。留学してきた子が、結果的にそういう大学をめざすことになった場合には、もちろん個別に対応します。けれども、そこをめざすための仕組みではないですよ、ということは付け加えておきたいと思います。

島根県立隠岐島前高等学校のフィールドワークに参加する岩本氏
写真提供=島前ふるさと魅力化財団
島根県立隠岐島前高等学校の教育会議に参加する岩本氏。高校生と島の未来像について語り合った。

テストで測れない成長を見る「評価システム」を構築

――先ほど、コーディネーターがいると生徒が伸びるとおっしゃっていましたけど、生徒の成長はどういうふうに測っているんですか。

【岩本】われわれ地域・教育魅力化プラットフォームと三菱UFJリサーチ&コンサルティングが協働で開発した「高校魅力化評価システム」というのを使っています。全国で300校、10万人ぐらいの高校生にアンケートをとって、主体性、多様な人との協働性、探究性、社会性、幸福感などの項目を調べています。

それを利用して、コーディネーターのあるなし、協働体制のあるなしで、子どもが1年生のときから3年生まで、どういうふうに伸びているかを調査・分析しています。