「インセンティブをつけると国民は動く」という発見

話題の理由2:ふるさと納税と同じで得だから

この2番目の理由は結構、重要な理由です。1番目の理由で「預金から投資に変えないと老後資金が十分に形成できない」ということが理解できたとしても、大半の人は「リスクが嫌だから」と動きません。

一方でここ数年、政府が学んだことがあります。それは「インセンティブをつけると国民は動くのだ」という発見です。これは行動経済学的な発見といっていいと思います。

たとえばマイナンバーカードを作れといっても、大半の国民は「なんか個人情報が洩れるといやだから作りたくない」と後ろ向きでした。この申請率がはねあがるきっかけになったのがマイナポイントの付与です。

最初は2021年末までにマイナンバーカードの交付申請をした人に5000円のポイントがもらえるという話から始まりました。それが効果があったことから、2023年には健康保険証とマイナンバーカードを紐づけると7500円、公金受取口座を登録するとさらに7500円ポイントがもらえる形にマイナポイントが拡大します。

結果としてみれば、いつのまにかマイナンバーカードの申請率は70%を超えて、いまでは大半の人がマイナンバーカードを所有するところまできたのです。このように国民を動かすにはインセンティブが重要です。

ふるさと納税には地元経済を回す効果がある

インセンティブによって大きく国民が動いた2つめの例がふるさと納税です。これは平たく言えばサラリーマンにとってお得な官製通販そのものです。サラリーマンが住民税の範囲内で地方自治体に寄付をすると3割相当の地産品がもらえます。

サラリーマンにとってはもともと納税していた税金が寄付に変わるだけなので、一律2000円かかる負担金を除けば、ふるさと納税でもらえる商品はただで手に入ったのと同じです。

箱に入ったすき焼き用の和牛
写真=iStock.com/show999
※写真はイメージです

寄付をしてもらった側の自治体では商品の代金に加えて発送料などのコストから寄付金の5割は消えてしまい、手元には5割の寄付金しか残りません。そのことを指して「むしろトータルでは税収が減る」という批判がありますが、実は寄付を受けた自治体はそのマイナスを補ってあまりあるプラスの恩恵を受けています。

というのも3割のお金は地元企業におちてきます。乗数効果といってそのお金がさらに回り回ることで、地元経済は5割のコストを取り戻す勢いで経済が回る効果が期待できるのです。

このマイナポイントやふるさと納税で「国民を動かすにはインセンティブが必要だ」と理解した政府が打ち出した、「銀行預金から投資にお金をシフトさせる秘策」が新NISAということです。

あとで細かい計算はお見せしますが、マイナポイントやふるさと納税と違って新NISAは長期的には数百万円規模で得をする仕組みです。だから皆、今年の1月からいっせいに証券口座を開設し始めているというのが、今起きていることなのです。