解約手続きをあえて簡単にしている理由

顧客にとっては買い物の失敗を回避する、新しい洋服の買い物スタイルとして、同社のサービスは瞬く間に支持を受け、サービス開始から8年(2023年2月)で会員数が100万人を突破しました。

宮下雄治『こうして顧客は去っていく サイレントカスタマーをつなぎとめるリテンションマーケティング』(日本実業出版社)
宮下雄治『こうして顧客は去っていく サイレントカスタマーをつなぎとめるリテンションマーケティング』(日本実業出版社)

一般的にアパレルのサブスクは多くの企業が参入し、その多くが短期間で撤退しています。同社やアメリカのStich Fix(スティッチ・フィックス)のようにAIによるスタイリングを導入している企業が支持を集めています。AIによる予測の精度を高め、1人ひとりの理想のスタイルにいかに近づくことができるか、これがサービス継続のカギをにぎります。

そして、同社にはもう1つ、顧客が「帰ってくる」という特徴があります。

エアークローゼットの代表取締役社長兼CEOの天沼あまぬま聰氏は、顧客体験の重要性を強調しながら、解約については次のように言及しています。

「解約の手順をわかりにくくする、無理に引きとめるといったことも、もちろん行なっていません。解約したい方には、すぐ簡単に解約できるようにマイページなども工夫しています。そのうえで、もう一度始めたい人はスムーズに再開できるようにしています」(FiNE HP)

「戻りやすさ」も重要なマーケティングになる

解約を防ぐための1つの手段として、年間契約の顧客には割引を用意する一方で、解約したい顧客には縛りを設けるなどの無理強いはまったくしていません。これが奏功していることは、「当社の月額会員に登録する方のうち10%強が、過去に解約して再開するお客様です」というコメントから、わかります。

コスパにすぐれているだけではなく、解約にいたるまで“すぐれた顧客体験にフォーカスすること”がリテンションマーケティングにおいて重要であることがわかります。天沼社長の次のコメントがそれを証明しています。

「気持ち良く解約してもらえれば、長くファンでいてくれます。そうすれば、またお客様のご都合が良いタイミングで戻ってきてくださると、定量的なデータでも確認できています」(FiNE HP)

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