最初の仕事は「自分への恩赦」か

トランプ氏が大統領に就任してまず行うと予測されるのが、自分に対する恩赦だ。トランプ氏はセックススキャンダルのような個人的なものだけでなく、2021年の米連邦議会議事堂襲撃事件をめぐる共謀に加わったなど、数々の容疑で訴えられている。トランプ氏自身は、それを「政敵による迫害」とみなしており、その主張に基づいて、自らに恩赦を与えるだろう。

夜のホワイトハウス
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だが事態は、それだけにとどまらないように思われる。トランプ氏はもともと個人的怨恨えんこんで行動を決定しがちな人物だ。自らを裏切ったとみなす者たちに対して、徹底的な復讐ふくしゅうを行うのではないか。それは民主党系の人物に対してだけでなく、いわゆるエスタブリシュメント層(伝統的支配層)全般に及び、共和党関係者であっても例外ではなく、復讐の対象になるだろう。

復讐劇で彩られる可能性のあるトランプ第2期政権は、外交政策も、そのような路線で進めていくかもしれない。

ゼレンスキーはトランプの復讐の対象?

例えばロシアのプーチン大統領は、トランプ氏のことを非難したことがなく、ある種の敬意を払っていることを感じさせている。すでに過去2年間のトランプ氏の発言には、ロシアに親和的な内容を含むものが見られている。アメリカの保守層には、強権的手法で国家運営をするプーチン大統領に親和的な見方をしている層が存在している。トランプ政権の誕生で最も得をするのは、プーチン大統領であろう。

これと正反対なのが、ウクライナのゼレンスキー大統領である。同大統領は、「トランプ氏をウクライナのキーウにご招待する」「トランプ氏はプーチンを知らない、わたしのほうが、より理解している」などといった発言を繰り返している。公然とトランプ氏を情勢に無知な人物と扱っているわけである。そして自分がトランプ氏の指導役になると言わんばかりの態度をとっているのである。

各国の政治指導者の中で、次期米国大統領に一番近い要人であるトランプ氏に対して、少なくとも公然とこのような見下した発言をしている人物は、ゼレンスキー大統領以外にはいない。トランプ氏が、ゼレンスキー発言を快く思っているはずがない。復讐の対象としてマークされている恐れがある。