トランプ派議員が政権入りすれば

ウクライナは圧倒的な額のアメリカからの軍事支援に大きく依存して、戦争を遂行している。米国議会が審議を空転させるだけで、大きな影響を受けてしまうのが、今のウクライナの実情だ。

議会におけるウクライナ向け軍事支援の予算案の可決を阻止しようとしているのは、トランプ派と目される共和党右派の議員たちだ。トランプ第2次政権発足の際には、さらに力を増し、政権入りする者も少なくないと目される人々である。トランプ第2次政権の発足は、ほぼ間違いなく、ウクライナ向けのアメリカの軍事支援の停止を意味するだろう。

もっともその機運に、プーチン大統領が本当に反応するかどうかなどの不確定要素は残っている。プーチン大統領が、アメリカのウクライナ向けの武器支援の停止と引き換えに停戦に応じることを拒絶したら、トランプ氏が裁量を行使するための行動をとる可能性はある。しかしプーチン大統領にとっては、アメリカにウクライナ支援を止めさせる千載一遇の機会である。取引に応じてくる可能性は、非常に高いと見ておくべきだろう。

ゼレンスキー大統領が、トランプ氏の歓心を得るためには、バイデン大統領の息子のスキャンダルを(捏造ねつぞうしてでも)リークするなどの汚い取引に応じなければならない。可能性として、トランプ氏がそれに関心を示す場合はありうる。しかし、自身よりも人気が高かったザルジニー総司令官を更迭しながら大統領選挙を延期し続けるゼレンスキー大統領の政権基盤は、秋までに相当に弱まっている恐れがある。そのような小手先の歓心術で、安定した政権基盤を維持できるほどにまで、ゼレンスキー大統領が国民の信頼を挽回できているかは、疑問だ。