がむしゃらだけでは、いい結果は出ない

ただがむしゃらに走り続けているビジネスパーソンというのは、脳を上手に休める術を知りません。彼らは、何となく、いつも時間に追われてあくせく働いているのではないでしょうか。

そういう人たちというのは、短時間で集中的に仕事をすることはできても、長時間密度の濃い仕事をすることはできません。そして、なかなか仕事のクオリティを上げることができません。

走るビジネスマンと目覚まし時計
写真=iStock.com/cherezoff
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では、同じように忙しく仕事をしている一流のクリエイターたちはどうでしょうか。

秋元さんにしろ、ユーミンにしろ、ものすごく忙しいはずなのに、まるで夏休みの宿題が終わった余裕のある小学生のような空気をつくり出しているのです。

もっとわかりやすくいえば、脳を休ませる隙間時間を上手につくり出していると考えることができるのです。

なぜなら、彼らはただがむしゃらに作詞をしたり作曲をしたりしても、人の心を打ち、後世に残るような名曲が生まれるわけではないということを知っているからです。

彼らは、曲づくりに行き詰まってきたと感じたときには、一度現場から離れてボーッとしたり、何も考えない時間を意識的につくり出したりして脳を休め、脳のエネルギーが補充されれば、再び曲の創作に戻るということを繰り返しているのです。

馬の習性に学ぶ

私が以前MCを務めていた「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で日本中央競馬会の調教師だった藤澤和雄さんがゲストに来てくださったとき、競走馬の育て方について、とても興味深いお話をしてくれました。

「どんなに強く、どんなに速い馬でも、頑張りというのは一生のうちにごくわずかしか使うことができないんです。たとえ将来期待されている馬だからといって、がむしゃらに速く走らせたり、頑張りを使いすぎてしまうと、その後どうしても伸び悩んでしまう。

人間でいえば、受験勉強をやりすぎて燃え尽きてしまって、その後の将来に希望が持てないのと一緒ですね」

私は思わず、「では、どうすればいいんですか?」とたずねました。

「そういうときには、わざと遅い馬と走らせるんです。馬というのは、みんなで走るという習性があるので、速い馬も遅い馬に合わせて走ろうとしますし、逆に遅い馬は速い馬に追いつこうとして走るようになる。

すると、速い馬は筋肉をそれほど酷使せずに走るようになるのでゆっくり強く育っていくのです。遅い馬というのは、速い馬に引っ張られていって実力が伸びていく。つまり、Win-Winの関係でトレーニングができるということです」

いかがでしたでしょうか。つまり、人間もただがむしゃらに突っ走るだけが結果につながるというわけではないということが、藤澤さん独自の調教法からもご理解いただけるのではないでしょうか。